9.見上げる花火

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待ち合わせしてた神社の前に行くと、もう咲弥くんと隅谷くんが来てた。 水色の浴衣に黄色の帯を締めた隅谷くんが手を振る。 「こっちこっち! 2人ともかわいいじゃん」 「慎太郎くん! その浴衣!」 花凛ちゃんが慎太郎くんの浴衣に釘付けになった。 「ちょっと派手だった? 男の着物って地味なの多いけど、目立つ方がいいじゃん?」 「青と黄色なんて、慎太郎くん尊い!」 青と黄色は咲慎のイメージカラー。隅谷くん、花凛ちゃんへのサービスだったのかな。でも、隅谷くんが「?」って顔してるから偶然だったみたい。 「結來も浴衣、すごいかわいい。似合ってる」 咲弥くんが微笑んでくれた。 「咲弥くん、紫が好きって花凛ちゃんに聞いて……」 「俺のために?」 コクンとうなずくと、咲弥くんが照れたように頭を掻いた。 「咲弥くんも浴衣、すごくカッコイイね」 咲弥くんの浴衣は、黒地に赤いラインが入ってすごくオシャレだった。 いつも大人っぽい咲弥くんだけど、今日は一段と大人に見える。 「ありがと。これ結構悩んだんだ。似合ってる?」 「うん! 侍戦士のときの袴姿も似合ってるけど、また雰囲気が違うね。この浴衣も番組で着たらいいのに」 「それはヤダ」 なぜか咲弥くんが唇を尖らせた。 「これは結來にカッコイイって言ってほしくて着たんだから。リュウノスケが着ちゃダメなんだって」 「ええ、そうなの? もったいないなぁ。みんなに見てもらいたいよ」 「結來が見てくれればいいの」 こんなにカッコイイ咲弥くんを私だけ独り占めなんて、贅沢すぎるよ。 でも私だけ特別って、ことだよね。 ゴホンゴホン、と隅谷くんが咳払いをした。 「えー、2人の世界はその辺にしといてもらっていいですかね?」 「ふ、2人の世界!?」 「わかってるよ。今日は4人で遊ぶんだもんな。鶴屋さん、誘ってくれてありがとう」 「そんなそんな! 私は咲慎が……いやいや、みんなで遊べたらいいなーと思って」 歩き出すと、花凛ちゃんが私の隣にやって来た。 「さっきの見た? 慎太郎くん、咲弥くんが結來ちゃんとばっかり話してるから嫉妬しちゃって。かわいくない?」 「あ、私がいると咲慎の邪魔になっちゃうかな」 「ううん! むしろありがとう! 新たな咲慎が供給されて感謝です!」 よくわからないけど、花凛ちゃんが喜んでくれてるならいっか。
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