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4人で一緒にヨーヨー釣りや金魚すくいをして、わたあめやりんご飴を食べて、お祭りを満喫した。お母さんが特別にお小遣いをくれたおかげだよ。
射的で咲弥くんと隅谷くんが勝負したときは、2人よりも花凛ちゃんが大興奮してた。
「咲慎対決だ!」
って、ずっと動画や写真撮ってた。すごく幸せそう。
「腹減って来たな。わたあめじゃ腹にたまらねえもん」
隅谷くんがお腹を押さえる。そういえば、ちゃんとお昼食べてなかったもんな。
「じゃあ、私何か食べるもの買ってくるよ。何がいい?」
「あー、待って待って。私と慎太郎くんで行くから、結來ちゃんは咲弥くんと座れるとこ探しといて」
私が買いに行こうとしたら、花凛ちゃんに止められた。
「結來ちゃん、咲弥くんと2人きりになりたいでしょ」
「そ、それは……でも、いいの?」
「いいの。いっぱい咲慎を見せてくれたお礼。じゃ、慎太郎くん。行こう」
「はいはい。ゆっくり行ってくっからな」
そう言って、慎太郎くんと花凛ちゃんは行ってしまった。
2人とも、ありがとう。
「じゃ、俺たちは場所取りしとこっか」
「うん。どこかいいところあると……っ」
突然、咲弥くんが私の手を握った。
「手、繋いどこ。人多くなってきたから、はぐれないように」
「う、うん……」
手を繋ぐの、アスレチックのとき以来だな。
咲弥くんに手を引かれて、私たちは屋台が並ぶ通りから抜けて行った。
見つけたのは、本殿の裏にある公園。っていっても、古いブランコと滑り台、それからベンチが置いてあるだけ。
穴場だったみたいで誰もいなかった。公園の四方には、赤い提灯が飾られてる。夜になったら明かりが灯ってキレイなんだろうな。
「慎太郎たちにメッセージで場所連絡しといたから」
「ありがとう」
ベンチに並んで座ると、ふうっと息をついてしまう。
「疲れた?」
「大丈夫。みんなと来れてよかった。すっごく楽しいよ」
「俺も」
咲弥くんに、じっと見つめられる。
何か言われるのかなと思ったけど、それ以上言葉はない。なんだか恥ずかしくなって下を向いてしまう。
「なんで下向くの? 顔見せて」
「だって、咲弥くんずっと見てるから」
「結來がかわいいんだから、仕方ないじゃん」
咲弥くんと付き合うまで、「かわいい」なんてお母さん以外から言われたことなかった。
最近は咲弥くんに言われすぎて、キャパオーバーだよ。私なんか、別にかわいくないのに……
って、いけないいけない。『私なんか』はダメ。それに、せっかく咲弥くんが言ってくれたことを否定するのも失礼だよね。
「浴衣、咲弥くんが喜んでくれてよかった。紫、好きなんだもんね」
「俺、紫色が好きっていうか、紫が似合う子が好きなんだ。大人っぽくて上品で、素敵な女性。結來みたいな」
「わ、私……?」
「簪は逆にちょっと子供っぽくてかわいいな。そういうのも似合う」
咲弥くんが、簪に垂れさがった紙風船の飾りをちょんと揺らした。
なんだか、時間がすごくゆっくり流れてる気がする。今この瞬間が、ずっと続けばいいのにな。
ふと空を見上げると、少し陽が傾き始めていた。
「本当は夜までいたかったんだけどな。結來と花火見たかった」
「侍戦士の撮影でしょ? みんな楽しみにしてるんだから、頑張らなきゃね」
「そうだけど、俺は侍戦士の前に結來の彼氏なんだからさ」
あーあ、と咲弥くんが足を揺らした。
「結來は、俺と花火見られなくて残念じゃないの?」
「私も咲弥くんと花火見たかったよ。でも、お仕事頑張ってる咲弥くんも大好きだから、応援したいんだ」
咲弥くんが驚いたように苦笑する。
「そう言われちゃったら、頑張らないとじゃん。侍戦士、結來のために頑張ってくるよ」
「地球の平和のためにでしょ」
「リュウノスケはな。俺は結來のために戦ってんの」
「ふふっ、心強いなぁ」
と、咲弥くんが急にマジメな顔をした。
「俺、何があっても誰が相手でも、絶対結來を守るからな」
「ど、どうしたの急に」
「結來って、あんまり弱音とか愚痴とか吐かないじゃん。1人で抱え込んだりしそうだから、心配なんだよ。なんかあったら俺に言えよな」
「ありがとう。でも大丈夫だから」
と言ったけど、咲弥くんはあんまり納得してないみたいだった。
咲弥くんが味方でいてくれるってだけで、私はすごく助けてもらってるんだけどな。
「あ、そうだ。咲弥くん、撮影って外?」
「うん、今日はバトルシーンの撮影だから」
「もし花火が見える場所なら、見上げてみてよ。私も見上げるから」
「そっか! そしたら一緒に花火が見られるな。俺たちは、同じ空の下にいるんだから」
咲弥くんが小さい子みたいにニコニコ笑った。
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