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「お待たせ~」
「焼きそばとたこ焼き、じゃがバタ買ってきたぞ~」
花凛ちゃんと隅谷くんが、食べ物を両手にいっぱい抱えて来てくれた。
1つずつ受け取ると、花凛ちゃんに耳打ちされる。
「もう少し時間潰して来た方が良かった?」
「う、ううん! 大丈夫。ありがとうね」
花凛ちゃん、私たちのことを見計らって帰って来てくれたんだろうな。本当にありがとうだよ。
みんなで食べた焼きそばとたこ焼きは、すっごくおいしかった。じゃがバタはあつあつでほっくほく。
屋台のご飯って、こんなにおいしかったっけ。
ご飯を食べて、今度は七夕飾りをゆっくり見てまわる。
カラフルなクラゲみたいな吹き流し、大きな笹の葉に揺れる短冊、キレイな星飾り。
いつもの神社が、今日はテーマパークみたいだった。
近所の幼稚園の子たちが折り紙で作った飾りもかわいい。
「あ、見て。咲弥くん」
私が指差したのは、幼稚園の子が書いた短冊。
「『リュウノスケになれますように』か。侍戦士のことかな」
「絶対そうだよ。咲弥くんは子供たちの憧れのヒーローだもんね」
「でも今日は、俺は結來の彦星だけどな。織姫様」
お、織姫って私のこと!?
思わず目を逸らしちゃうと、咲弥くんに笑われる。
「あ、結來照れてるー」
「照れるよ~。咲弥くん、今日は恥ずかしいことばっかり言うから……」
「恥ずかしくないだろ。ロマンティックって言えよ~」
もう、咲弥くんってば。
と、いつの間に先に行っていた花凛ちゃんに「ねえねえ!」と呼ばれる。
「ここで短冊書けるんだって。みんなで書こうよ!」
「よし、俺は世界平和を願うぜ」
「世界平和は俺に任せとけよ」
「侍戦士さんに言われたら負けるわ~」
咲弥くんにはい、とピンク色の短冊を渡される。何を書こうかな。
世界平和なんて言ってた隅谷くんは『期末テスト赤点取りませんように』って書いてる。そういえば、来週は期末だったな。今日1日遊んじゃったけど、寝る前に少し勉強しておこう。
花凛ちゃんは『また咲慎がCD出してくれますように』だって。書いた短冊を咲弥くんと隅谷くんにめちゃくちゃアピールしてる。2人とも人気だから、きっと叶うんじゃないかな。
咲弥くんは……
『結來とずっと一緒にいられますように』
さ、咲弥くん! ストレート過ぎるよ!
「結來はなんて書いた?」
顔を上げた咲弥くんに覗き込まれる。
「なんだ、まだ書いてねえの? 1つは絶対書いてほしい願い事あるんだけどなぁ」
「い、今書くから……」
でも『咲弥くんとずっと一緒にいられますように』ってそのまま書くのは恥ずかしいよ。この短冊、他の人にも見られちゃうし。
だけど、咲弥くんも書いてくれたんだから……そうだ!
「結來ちゃん、なんて書いたの?」
書き終わった短冊を花凛ちゃんが覗き込む。
「『彦星様とずっと一緒にいられますように』……? 彦星って、咲弥くんのこと?」
「結來~! マジで嬉しいんだけど!」
「咲弥くんってそのまま書くのは、ちょっと恥ずかしかったから」
「付き合いたてのカップルさんはお熱いことで。俺的には彦星様なんて書く方が恥ずかしいけどな」
やれやれ、と隅谷くんが肩を竦めた。
あ、あれ? 逆効果だったかな。
短冊を飾ると、そろそろ夕方。
名残惜しいけど、みんなで咲弥くんを見送る。
「じゃあな、咲弥。夜のエスコートは俺に任せとけ」
「それが心配なんだけど……頼むよ、鶴屋さん」
「任せといて! 結來ちゃんのことは私が守るから」
「ちょっ、花凛ちゃん俺の立場は~?」
目が合った咲弥くんが、空を指差す。うん、とうなずいて私も空を指差した。
夜になって、私たちはさっきの公園でかき氷を食べながら花火が上がるのを待った。
公園の中には、花火を見るためにたくさんの人が集まってる。
「場所取っといてよかったな」
「結來ちゃんたちがいい場所見つけてくれたおかげだね」
「キレイに見えるといいけど。どっちの方向から上がるのかな」
えーっと、と隅谷くんがキョロキョロと空を見上げる。
「たぶん、こっちの方だと――」
ヒュ~~~と、音が聞こえて来た。すぐにドーンと全身に響く音がして、夜空に丸い大きな花火が。
「うわわっ、今かよ!」
「キレイに見えたね、結來ちゃん」
「うん、すごい大迫力!」
続けざまに何発も上がる花火に、神社の中が歓声に包まれた。
咲弥くんもこの花火、見上げてるかな。
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