11.夏のお楽しみ

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11.夏のお楽しみ

次の日、朝の情報番組で『綾瀬桃弥、侍戦士で兄弟対決!』と特集されていた。 綾瀬先輩は新たに現れた敵の幹部・悪鬼幻月(あっきげんげつ)役として登場するらしい。 画面には侍戦士の袴を着た咲弥くんと、金色の模様が入った黒い豪華なマントを羽織る綾瀬先輩の撮影風景が流れていた。 メイキング映像が終わると、2人のインタビューが始まる。 「兄弟共演って初めてなんですよ。俺は特撮も初めてなんで、咲弥にいろいろ教えてもらおうと思って」 「兄ちゃんの方が先輩なんだから、何も教えることなんてないよ。俺の方こそ、兄の胸を借りるつもりで頑張ります」 「でも敵同士なんだから容赦しねえぞ」 「こっちこそ、侍戦士の名に懸けて倒してやるからな」 ニコニコ話す2人は、絵に描いたような仲良し兄弟に見える。昨日の険悪な雰囲気がウソみたい。 今日は朝から撮影があるみたいで、学校に咲弥くんの姿はない。 でも綾瀬先輩のニュースがあったからか、クラスでは珍しく侍戦士の話でもちきりだった。 私も花凛ちゃんと話していると、隣のクラスから隅谷くんがやって来た。 「やっと発表になったんだな。すげえ盛り上がってんじゃん」 「隅谷くんは前から知ってたの?」 「ちょっと前にな。だから最近は兄弟共演シーン多くって、学校の場面あんま出てこないんだよ。俺の出番もだいぶ減ってる」 「ええ!? 慎太郎くん出番減ってるの!?」 花凛ちゃんがへなへなと机に倒れた。 「咲慎シーンが楽しみで見てるのにぃ~」 「これからは兄弟シーンが見れるじゃんか」 「誰でもいいってわけじゃないの!」 隅谷くんはリュウノスケのクラスメイト・テンマ役をしてる。 戦いには関わらないけどリュウノスケの親友って設定だから、学校のシーンで一緒にいることが多い。 花凛ちゃんのスマホの待ち受けは、リュウノスケとテンマの写真だ。 「花凛ちゃんは綾瀬先輩のこと、好きじゃないんだっけ?」 「嫌いなわけじゃないけど、咲弥くんが桃弥先輩のこと苦手っぽいから心配なんだよね」 「あの兄貴を得意なやつなんてなかなかいないだろ。言っちゃなんだけど、俺様って感じで俺も苦手。咲弥とは全然違うタイプなんだよな」 俺様……私はまだ1回しか会ったことないけど、それでも威圧感のようなものを感じた。 咲弥くん、大丈夫なのかな。
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