15.終演

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咲弥くんに連れられて、劇場の裏口を出た。 そこは芝生になっていて、テーブルとベンチが置かれてる。関係者の人が休憩に使うのかもしれない。 「ほんっと、ごめん! あのバカ兄貴が」 「ううん、大丈夫。それより、私……咲弥くんに話があるの」 改めて向かい合うと、咲弥くんは「なに?」と首を傾げた。 「お付き合いのお試し期間……終わりにしてください」 咲弥くんが息を飲む。 本当は今日ここで、咲弥くんとお別れしようと思ってた。 でも今伝えたいことは…… 「私と、正式にお付き合いしてください」 舞台上で叫んだとき、私の心は決まった。 咲弥くんが目を大きく見開く。 「ホントに? ホントにいいのか?」 「うん。咲弥くんがいいなら」 「いいに決まってるだろ!」 突然、咲弥くんに強く抱きしめられた。 ぎゅうっと、咲弥くんに包まれる。 「さ、咲弥くん!?」 「舞台上で叫んでくれたの、俺めちゃくちゃ力になった。結來のためなら、俺マジでなんでもできると思った」 「咲弥くんが、『俺が絶対に結來を助ける』って言ってくれたから……」 だからあのとき声が出た。体の奥から湧き上がってくるみたいだった。 「なあ、もう1回言ってくれよ」 「え?」 「咲弥くんが好き、って」 耳に咲弥くんの唇が触れる。 ボンッと顔から火が出たみたいだった。 「さっき兄貴には言ったじゃん。ちゃんと俺に言って?」 「さ、咲弥くんのこと……」 「うん?」 ギュッと目をつぶって、咲弥くんの背中に腕をまわした。 「咲弥くんのこと、大好き」 一般人と芸能人、大変なことだってあると思う。 でも咲弥くん言ってくれたから。『ワガママ言ってもいい』って。 「ずっと咲弥くんと一緒にいたい。私のワガママだけど」 「そんなワガママだったら、いくらでも叶えてやるよ」 咲弥くんの瞳に、私が映ってる。私の瞳の中にもきっと、咲弥くんがいる。 「大好きだよ、結來。ずっと一緒にいような」 「うん! 私も、大好き!」 優しいそよ風が、私と咲弥くんを包み込むように吹き抜けて行った。
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