3.ウワサの真相

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仕事があるからと、綾瀬くんがお店を出て行った。 1人残った隅谷くんが、スマホ片手に抹茶フロートを飲んでる。 さっきの様子だと、綾瀬くんと隅谷くんはすごく仲が良さそう。隅谷くんなら綾瀬くんのこと、いろいろ知ってるかも。 よし、と思い切って立ち上がる。仕切りの壁をまわって隣のテーブルに行った。 「あの、隅谷くん?」 「うわっ! 結來ちゃん? ビックリした~。ウワサをすればなんとやらってやつ?」 驚いてた隅谷くんだったけど、すぐに「まあ座って座って」と綾瀬くんが座ってた席をすすめてくれた。 隅谷くんは、侍戦士に出たときと同じ黒縁のメガネを掛けてる。トレードマーク、なのかな。 「ごめんなさい。私、隅谷くんと綾瀬くんの話聞いちゃってて」 「いいよ、いいよ。その方が話早いし。で、ぶっちゃけどうよ。咲弥のこと、好き?」 「…………」 「ウソ! 嫌い?」 「ち、違うの。嫌いじゃない、けど……」 黙り込んでしまった私の顔を、隅谷くんが覗き込む。 「咲弥のこと、聞きたいことがあるならなんでも聞いて。俺、あいつとは芸能界に入った頃からの付き合いで、幼馴染みたいなもんだからさ」 ウワサのこと、まさか本人に聞くわけにはいかない。今頼れるのは、隅谷くんだけだ。 「……綾瀬くんのウワサを聞いたの。いろんな子に声を掛けてるって」 「あぁー……」 アレね、と隅谷くんが頭を掻いた。 「それ、小学生の頃からずーっと言われてるんだぜ」 「えっ!?」 「あいつ、昔から人見知りとは無縁でコミュ力高いから、誰にでも話しかけてすぐ仲良くなるんだよ。男女関係なく。それでプレイボーイとかナンパ男とか言われてるってわけ」 それ、誰とでも友達になれる人ってこと、だよね? 「じゃあ、ウワサは誤解なの?」 「誤解誤解! 元カノも何人もいたけど……」 「何人も!?」 小学生のときに元カノが何人も……。 芸能人、やっぱり住んでる世界が違うよ。 なんて思ってると、隅谷くんが「違う違う」と慌てた。 「最後まで聞いてって。元カノ何人もいたけど、全部一方的に告られて一方的に振られてんだよ。最長1ヶ月、最短3時間かな」 「え……どうして?」 「誰とでも仲良くなるから女の子にもモテるんだけど、付き合っても変わらずみんなと仲良くするから彼女が怒って破局……の繰り返し」 「そ、そうなんだ」 隅谷くんがテーブルに身を乗り出した。 「咲弥は本気で結來ちゃんに告ったんだよ。誰にでもすぐ声を掛けに行くあいつが、結來ちゃんに声掛けるまでかなり時間かかってたんだから」 「そうなの?」 「『おはよう』って言えただけで大喜びしてたんだぜ。告白するって決めてからも、どうやって言おう。何かきっかけとかないかな。どうすればいい? って悩みまくってた。あんな咲弥初めて見たぜ」 綾瀬くん、本気だったんだ。本気で私のこと好きだって言ってくれたのに、疑ったりして……。 でも、それならそれでわからないことがある。 「綾瀬くんは、どうして私なんかに告白してくれたんだろう」 「そりゃ、結來ちゃんが好きだからっしょ」 「私なんかの、どこが……」 チャンチャララン♪ 隅谷くんのスマホからメロディーが鳴った。 「悪い。俺もう行くな」 「隅谷くんもお仕事?」 「お仕事お仕事! 告白した理由は本人に聞いちゃえよ。じゃあな!」 飲みかけのフロートを片手に、隅谷くんが飛び出して行った。 本人に、かぁ……。
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