5.校外学習

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バスの中で寝てる間に、アスレチックワールドに到着した。 先生の話が終わり、みんなが散り散りに解散して行く。 「結來、おはよ!」 振り向くと、咲弥くんがいた。 「おはよう、咲弥くん」 「バスで声掛けようと思ったんだけど、結來ずっと寝てるから」 「早起きしたから眠くなっちゃって」 「俺も、昨日楽しみであんまり眠れなかったんだよな」 初デート。 その言葉を思い出して、なんだか咲弥くんと2人でいることが恥ずかしくなる。 私たち、本当に恋人になったんだよね……? 「いやあ、めでたいね~。おふたりさん!」 賑やかにやって来たのは隅谷くんだった。 「なんだよ、慎太郎。お前、清水たちとまわるんだろ?」 「その前にお祝いに来たんだよ。2人の仲を取り持ったキューピッドとして」 隅谷くんが私にウインクを飛ばす。 隅谷くんがいなければ、咲弥くんのことを誤解したままだった。 「この前はありがとう、隅谷くん」 「いいってことよ~、結來ちゃん」 「はっ!? お前、結來と何があったんだよ!」 咲弥くんをひょいっとかわして、隅谷くんは手を振って駆けて行った。 「じゃあな~、お幸せに~」 「ちょっ、慎太郎! ったく、なんなんだあいつ」 「あはは、2人とも仲良いんだね」 幼馴染の子役仲間って言ってたっけ。 いいなぁ。私もそんな友達、いたらいいのに。 「もうみんな行っちゃったな。俺たちも行こうか」 「うん!」 『アスレチックワールド』は、その名の通り広い敷地内の至る所に、丸太やロープでできたアスレチックがある。 空中にロープが張ってあったり、池の上にタイヤが浮いてる。 「俺、ここ始めて来た。結來は?」 「私は去年1回だけ。地区の子供会で来たことあるよ」 「へえ、じゃあアスレチックは先輩だ。攻略法教えてよ」 「無理無理。私運動苦手だし、それに前に来たときは見てるだけだったから」 「見てるだけ?」 ここのアスレチックは、ほとんどが子供でも遊べる。だけど、小さい子が1人で遊ぶのは難しい。 「お母さんが仕事だったから、私が妹と弟を連れて参加したの。妹はまだ1年生だったし、弟は年中さん。2人がケガしないようにとか、迷子にならないように見てるのが精一杯で、私が遊んでる場合じゃなかったんだ」 「そっか……」 あれ、なんかしんみりした空気。 私は慌てて首を振った。 「楽しくなかったわけじゃないよ。私長女だから、2人の面倒を見るのはいつものことだし、2人が楽しかったって言ってくれて嬉し……」 「俺も、あんまり遊んだことないんだ」 咲弥くんが足元の石ころを蹴飛ばした。 「物心ついたときから子役やってたし、習い事も多かったから。アスレチックとか遊園地とか行ったことあるけど、それはいつも撮影」 「そうだったんだ……」 「だからさ」 咲弥くんの蹴った石が、遠くに飛んで行った。 「今日は2人でめいっぱい遊ぼうな。なんたって、初デートなんだからさ」 ニカッと笑う咲弥くんに釣られて、私もほっぺが緩んだ。 咲弥くんの後ろに、太陽の光がサンサンと輝いていた。
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