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私たちは敷地内の端からアスレチックに挑戦して行った。
網目状に張られた縄を登ったり、ターザンロープで滑ったり、池の上のタイヤを飛んだり……
そして今は、空中にロープで吊るされた丸太の上を渡って行く、グラグラ橋に挑戦中。
チラッと下を見てしまったら、ものすごい高さ……!
「あっ!」
グラッとバランスが崩れて、近くのロープにしがみつく。
「結來!」
先にゴールしていた咲弥くんが、板の上から身を乗り出した。
「下は見るな。俺だけ見てろ」
「……っ、うん!」
ゆっくり少しずつ進めば、咲弥くんとの距離が近づいてくる。あと少し、もうちょっと……
「結來、あと少しだ。掴まれ!」
咲弥くんが私に向かって手を伸ばした。私は恐る恐る片手をロープから離して、少し腕を伸ばす。
その手を、咲弥くんが掴んでくれた。初めて咲弥くんの手に触れた。
「よしっ!」
咲弥くんに引っ張られるようにして、なんとか渡り切った。引っ張った拍子に咲弥くんが尻餅をついて、私も倒れ込む。
「ご、ごめん! 咲弥くん大丈夫?」
「俺は平気。頑張ったな、結來」
私の手を掴んでくれてた咲弥くんの手が、今度は私の頭を撫でる。
「恥ずかしいよ。ちっちゃい子じゃないんだから……」
「いいじゃん。誰も見てないんだから」
こんなの私が柚や樹にしてあげてることなのに。
でも、ちょっと……嬉しい、かも。
グ~……とお腹の虫の音が聞こえた。私じゃない。
ということは……?
「あ、はは……俺だ」
「もうお昼過ぎてるみたいだね。お弁当にしようか」
「よっしゃ! 結來の弁当楽しみで、朝飯抜いて来たんだ」
「えっ、じゃあお腹ペコペコだよね。早く言ってよ~」
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