土曜日

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土曜日

土曜日の16時頃、カフェでアイスコーヒーを飲みながら本を読んでいた。 右手でストローをつまみながら左手で本を開く。 いつのまに定着したスタイルだ。 今日が祝日だということは、 昨日営業先の担当者に言われて初めて気がついた。 会社の同僚達は、 「休み休み、次はいつが休み」 と、いつだって休日を追い求めているようだった。 このご時世で派手に遊ぶことも難しいというのに、 一体何がそんなに皆の休日を 輝かせているのかと思っているのは 自分だけなのだろうか。 男は女と、女は男と遊ぶ意外に 心躍ることなんて無いだろうと勝手に決めつけている。 もしかしたら皆、そのような予定があるのではないかという考えに至ると少し嫌になるため、 いつもそこで考えることを辞める。 何となく気が合いそうな同期の男達は、 マッチングアプリを上手く駆使しているようだったが、こちらとしてはどうも不得意で アンインストールしてはまたダウンロードしてを繰り返している。 もともとアナログな出会い方が好みだったため、 誰もがマスクをしている世界で恋の訪れは見込めない。 にも関わらず、こうして明るい時間に カフェにいるのは、 根拠のない何かしらの希望を 抱えているからなのだろう。 そんな自分に嫌気がさしてしまうが、 自分自身でいて良いのだと、 カリスマ的な人気を誇る海外のアーティスト達の共通パンチラインがいつも励ましてくれる。 きっとこの言葉の真意は、こういうことではない。 ただ、それを探究しようとは思わない。 店内は思ったよりも混んでいたため、 出入り口付近のカウンター席に座っていた。 ここは、扉が開くたびに少し寒くなるが、 美人が入店したことにいち早く気がつくことができるそこそこ良い席だと思う。 どうでもいい時に限って前向きになる癖は いつからついたのだろうか。 もうすぐ、裾上げを頼んだジーンズを 受け取りに行く時間だ。 帰りに最寄駅の百均で 大きめなお椀でも買って行こう。 今日の晩御飯候補は、ラーメン、野菜炒め、青椒肉絲ロースかな。 ピーマンが好きなんだな。 今日の発見はこの程度だ。 席を立つ前に隣の男のPCの画面が視界に入った。 流行りの漫画を食い入るように見つめ、 コメントを殴り書いている。 ほほう、そんな仕事もありますよね。 では、僕はお先に帰ります。 店を出る前に皆様にお願いです。 お願いですから、若いお姉さんが僕にぶつかってコーヒーをぶちまけるよう仕向けて下さい。
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