さそり姫

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「……サーナ」 「しょうくん、起きた?」 「……あ、サナ」  思わず空想上の名前を言ってしまったが、聞き流されたようだ。はずい。よかった。 「すっごい、寝てたよ。おばさんに怒られるよ多分」 「まじ? やべー」  言いながら、僕はサナの姿をすみずみまで見渡した。どこからどう見ても、はっきり言ってサナである。当たり前か。 「変な夢見たんだよ〜。こわかった〜」 「どんな夢?」 「え。うーんと」  ま、夢だからいっか。 「サナが、星のお姫さまになる夢」 「『星の王子さま』じゃなくて?」 「ふふ。うん。読んだ?」 「読んだよ。貸してくれてありがとう」 「ううん」 「もうすぐ夕ご飯だって。ここ使うみたい。もうすぐしょうくんのお母さんが来るって」 「そっか」 「しょうくん」 「何?」 「……あんまり、夢の話はしない方がいいよ」 「え、そう?」 「うん。やめた方がいいよ」 「……そっか」  サナちゃーん、と遠くで母親の声がする。 「はーい」  サナは母親に届くように声を張った。 「手伝った方がいいんじゃない? 行こ」 「……あのさ、サナ」 「ん?」  一瞬、声がつまった。
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