1章

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しかし、文句を言ったところでどうにもならないことは分かっているため、黙々とパソコンに向かって作業を始めた。 それから1時間ほど経った頃だろうか。 定時を知らせるチャイムがなり、みんなぞろぞろと帰り始める。 皆川課長は荷物をまとめた後にこちらへ寄ってきてニヤニヤしながら 「じゃあ、終わらせといてね。終わらなかったらまた明日の朝礼で説教だからな」 と言い残してオフィスを出ていく。 「はい、頑張ります。」 と呟いた僕の言葉はきっと届いていないだろう。 それに、どうせ押し付けられた仕事が終わっても終わらなくても朝礼で名前呼ばれて色々言われるのは目に見えている。 今朝だって昔からの付き合いがある得意な取引先が新しい取引の担当として僕を指名したと言ってくれたのにそれに対しては『いくら払ったんだ』と朝から怒鳴り散らかされ、社内ではほとんどの人が僕のことを営業獲得のために賄賂を払うやつだと思われている。
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