1章

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真鍋は一つため息をつき、「やっぱりか」と呟いて作成した資料のデータを持って自分のデスクへ戻っていく。 彼の言動を見る限り、きっと自分のやろうとしていたことはバレているのだろうと思う。 しかし、先程発していた「やっぱりか」という言葉の意味がわからず少し考え込む。 さらに、あいつは僕の担当している案件は話をするがまさか部長の担当まで把握しているとは思わなかった。 そうすると、今まで残業していた内容が自分の仕事ではないということはずっとバレていたのかもしれない、と思うとなぜかわからないが自分の中に悔しさが芽生えてくる。 10分ほど1人で葛藤していると真鍋はこちらのデスクへ寄ってくる。 「ほら。直そうとしてたところ直したから帰るぞ」 「え?あ、ああ、ありがと」 それぞれ軽く確認すると全て作成者は部長の名前に変わっていて、やはりバレていたんだと思うと先ほどの悔しさに加えて自分の不甲斐なさに涙がこぼれそうになる。
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