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ええねん……かまへん……
ええねん……かまへん……。
制御不能の残業部長がほほえみを浮かべて夜のオフィスを歩いている。その手には鋭利なナイフが握られていた。
「部長! 止まって!」
人員削減プログラムってなんだ。
殺すのか、殺しに行くのか!?
俺は残業部長にしがみついて止めようとした。
「部長、ダメだ。止まれ!」
「はよ帰り」
この状況で帰れるわけがないだろう!
残業部長に触れると、全身からブシューっと煙を放出した。
「ゴホぉ! なんだこれは」
それは強烈なレモン臭だった。
俺はせき込み、刺激に目をやられて地面にうずくまった。
ええねん……かまへん……
ええねん……かまへん……
「違う、人を減らすな、この世から消すな!」
「俺はただ、仕事量を削減してほしいだけなんだ!」
ええねん……かまへん……
ええねん……かまへん……
過労でおかしくなった部長は、俺を置き去りにした。
ええねん……かまへん……
ええねん……かまへん……
抑揚のない声でくり返し、のらり、のらりと去っていく部長は、オフィスの深い闇の中へ溶け、俺の前から姿を消したのだったーー。
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