友愛ラプソディ

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友愛ラプソディ

「どういうことだよオイ」  洞窟の中に、いかにも“不機嫌です”といった声が響く。そりゃそうだろうな、と納得した。僕が彼の立場でも全く同じことを言うだろう。話が違う、どうしてこうなった、と。 「何考えてやがるんだ、村の連中は」  ずるる、と滑るような音が聞こえた。闇の奥から這い出してきたのは、下半身が蛇、上半身が人間といういでたちの怪物。  そう、怪物だ。それでも僕は、恐ろしさとは別の感情で息をのんだのである。細身だが引き締まった腹筋と胸筋、長い黒髪に、青空のような美しい青い瞳。きりりと吊り上った眼は、気の強そうな印象を与える。下半身が大蛇であることを除けば、まごうことなき絶世の美少年がそこにはいたのだ。  蛇神様は恐ろしい、おぞましい。そう覚悟していただけに僕は拍子抜けしてしまった。なんだ、ちょっと美形すぎるだけ、下半身が蛇なだけの――そう、人間と変わらない見た目ではないか、と。 「おい、お前。本当に“お前”なのか?俺の結婚相手、は」  彼の言葉に、僕は肩をすくめた。 「その通りごめんね、可愛い女の子じゃなくて」 「男だろ、どう見ても」 「うん。なんなら脱いで確認してみる?」 「いや、顔見て声聞けばわかっから。男のハダカとか興味ねーし」  なんだろう、妙に人間くさい喋り方をするもんだ。僕は少しだけ感心してしまった。同時に気づくのである。僕はこの神様を相手に、本当のこれぽっちも恐怖心を感じていないということに。まあ、殺されることも覚悟していたわけだから、今更といえば今更なのだが。 「何考えてるんだって?そりゃもう、見たままじゃないかなあ」  僕は蛇神様の目をじっと見た。僕の眼も青いとよく言われるが、鏡で見る僕の瞳とはまるで違う色だ。僕の眼は、彼のそれよりずっと群青に近い色なのだから。 「村の人は、僕に死んでほしいんだよ。異人の子なんてただでさえ気持ち悪いわけだしね」
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