あゝ無情

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中学から高校に上がるころ 一宮がヒートの期間に入り1週間学校を休んだ。 当然、番の野村も同時期に休みに入るかと思えば、彼はひとりで学校にきて普段通りに生活をしていた。 不思議に思い、野村にそのことを聞こうとも思ったが、センシティブな内容だしそもそも、僕には全く関係のない話だと思いなにもせずいた。 放課後 野村が 「何も聞かないな?興味ない?」 と一言発し、帰る準備をしていた、僕の目の前に無表情で立っていた。 ”一緒に帰ろう”と野村からの提案で、初めて一宮抜きで2人だけで帰った。 その時の話は2人の関係性についてだった。 2人は生まれた時からの許嫁で家同士がきめたこととはいえ、野村も一宮もそれに従うつもりであること。しかし番うのは成人してから。 そして・・・ 一宮の美しさが、ある種の人間を刺激すること。それから守るためには 僕のような一般人が周りにいることで、僅かながら効果があること。 そのためもし、このまま同じ大学に進む予定なら 一宮を守る手助けをするために、このまま友人関係を続けてほしいと。 ”僕には荷が重すぎる。ほかをあたって” と告げると 野村は、 ”お前のような人畜無害が世の中には少なすぎる、どうか受けて欲しい” と頼み事をするには失礼な物言いで、だけど、いままでの冷ややかな双眸を引っ込めて、まるで愛の告白のごとく熱く説得されて、渋々頷いたのだった。 それから月日は流れ高校3年間は瞬く間に終わり 大学生になった今現在も3人の関係性は今までと変わりなく継続している。 ただひとつ気になることが、野村と僕の学部棟は一緒なのだが 一宮だけはひとり違う学部のため、なかなか一宮の動向を探るのに苦労していた矢先、事件が起きた・・・ なんと、一宮が全く知らないアルファと手をつなぎながら構内を歩いているのに遭遇してしまった。 その顔つきは、一心にその男を慕い、いままで野村といる時とは全く違う顔。 その表情から、魂の番に出会ってしまったことは疑う余地もなかった。 自分がミッションに失敗してしまったような、なんとも言えない気持ちが心に充満してきた。 このことを野村に告げる前に 一宮と話しをしよう。そしていままでの経緯もすべて話そう。 そうしたら、一宮も野村の献身に考えを変えるかもしれない・・・ そうおもったら居てもたってもいられず 大声で”いちのみや君!!”と本人を呼び止めた。 少しも驚く様子もなく”なんだ三田君そんな大声だして、これからご飯だから君も一緒に行こう”なんて呑気な顔をしている。 僕は今までになく鬼気迫った顔で、2人だけで話がしたい その男は席を外してもらえないか?聞いたものだから 一宮も気圧されて、怪訝そうに頷いた。
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