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あゝ無情
幼馴染とは厄介だ。
大学付属の私立エスカレータ式中高一貫校の中学の入学式で2人に出会った
一人はこの学校創立以来の眉目秀麗有名アルファ 野村 修一
もう一人は、その儚い美貌と家柄の良さで一目置かれるオメガ 一宮 凛
2人は似合いの番で、まるで最初から他人などいないかのように
常に2人で行動し、スポットライトがあたっているかのように目立ち周囲を圧倒していた。
そんな2人に唯一存在を認めてもらい、
友人というポジションにおさまったのが
なんの取柄もなくベータのこの僕自身 三田 健一
なにが気にいったのか、一宮凛のほうからある時、話しかけてきたのだ。
綺麗な茶色の瞳を少し歪ませ、でも楽しそうに
「君はベータなの?その割には随分と成績優秀のようだけど」
僕より成績優秀なベータなんて吐くほどいるのに、なぜ僕だったのかは
皆目、見当がつかなかったのだが・・・・
あとから聞いた話だと、唯一僕だけが2人に取り入ろうしたり、貶めようと画策したりせず、ごく普通に接してくれたと話してくれた。
そんな当たり前のことすら、彼らには異質に映るほど、取り巻く環境が一般人とは違うということに驚きを覚えた。
それ以来、一宮とはよく喋るようになり、必然的に野村も加わり、一緒に昼食をとったり他愛ない話をしたりして過ごし、3人で善い友人関係を保っていた。
だが実際のところ、僕は野村が苦手だった。ふと顔をあげると、こちらを恐ろしいほど冷たい目で見つめている。
一宮と楽しく過ごしていると余計その視線を感じるのだ。
確かに自分の唯一であるオメガが、他のベータやアルファと親しくするのを喜ぶやつはいない。
だから、僕自身はいつも心を戒めていた。
彼ら2人は全く違う世界の住人なのだ。
深入りはせずに、あくまで表面上仲良くしているのにすぎないのだと・・・
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