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「後半夢中で読んでたわ」
「た、楽しめたならよかったね」
結局、時間いっぱい隼人君はずっと漫画読んでて全然寝なかった。なんなら、ソファの背もたれも使わずに座ってたし。
「あれどうだった?」
「あ、あれ?」
「映画の原作、読んだんだろ?」
「あ、あぁ!あれね!うん、読んだよあれ!」
「やっぱ内容一緒だった?」
「えっ?う、うん!大体そんな感じだったよ!」
ホントは、隼人君が気になり過ぎて漫画なんか全然読んでないけど。
ていうか隼人君、実は疲れてないとか…だって全然、寝る気配どころかゆっくりしようともしないし。
いや、そんなことないよね。昨日電話でああ言ってたし。隼人君が疲れたなんていうの、珍しいし。
「周」
「…」
「周」
「え!あ、ごめん!何?」
次はどうしよう…なんて考えながら歩いてたから、隼人君の声が耳に入ってこなかった。慌てて返事をすると、隼人君の足がぴたりと止まる。
少し眉間にシワが寄ってて、もしかして怒らせたのかもしれないと思うと途端に悲しくなった。
今日私のせいで色々予定変わったし、隼人君とろくに会話もできてない。せっかくの記念日なのに、私が台無しにしちゃってるよね…
「あの…隼人く」
「くそ可愛いな、周は」
「ごめ……えっ?」
「だから、可愛いって言ったの」
繋がれてなかった手を、隼人君がギュッと握る。彼の手の平は、さっきよりずっと熱い気がした。
「わりぃ、気付いてた」
「え、えぇ?」
「いやネカフェであんだけガン見されたら、何かあるって分かる。周のことだから、俺が寝ればいいと思ってたんかなって」
「うわぁ…恥ずかしい…」
顔を覆いたくても、片手にバックで片手は隼人君と繋がってるからどうすることもできない。
「可愛いしかねぇよこんなん」
「もう…やめてよっ」
「周らしいっつーか、ホント他人本意だよな」
「成功しなきゃ意味ないし…ただデート台無しにしただけじゃん私…」
しょんぼり落ち込む私の頭を、隼人君が映画館の時と同じようにポンポンと優しく叩いた。
「そういうとこ、マジで好き」
「…っ」
「ま、まぁだから気にすんなってこと」
自分で言って照れてる。可愛い。
…じゃなくて。
「ごめんね、隼人君」
「謝んなって」
フッと優しく微笑む彼を見て、私も自然と笑顔が浮かんだ。
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