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アルバイトの子と一緒にやってきたのは、制服に身を包んだ警察官達。その一人が制帽をクイッと上げて、この場にそぐわない爽やかな笑顔を見せた。
「お待たせしてすいません、寺田店長。」
「じっ、神宮さん!いえ、そんな」
明らかにホッとした表情を見せる店長に、思わず苦笑いしそうになるのを堪えた。
「おっへぇんだよ!職務怠慢じゃねぇか!」
「あらぁ、随分酔われてますね」
その警察官は慣れた様子で酔っ払い男の暴言を軽くあしらう。
彼の他に来ていた警察官数人が、さり気なくその男を囲うような動作を見せた。
「お疲れ様、中川さん」
私にだけ聞こえるような小声だったけど、語尾に音符でもつきそうな感じの軽さだ。
ペコリと頭だけ下げると、私はお子さんと女性に笑顔を向けた。
その後は、警察の人達にお任せ。簡単に事情を聞かれたりの何だかんだはあったけど、結局酔っ払いおじさんは連れていかれた。
もちろん、女性にはお咎めなし。
「ベビーカーは仕方ないけど、あぁいう手合いにはまず近づかない方がいい」
ってアドバイスされてて、警察の人達や私に何度も頭を下げながら帰っていった。
「本当に、ありがとうございました!」
「いえ、私は何も」
「そんなことありません!あなたがずっと庇ってくれていたから、私とても心強かったです!」
最後に、そう笑ってくれて。
私も精いっぱいの笑顔でお辞儀をした。
「なーかがーわさんっ」
お客様を見送った後、ポンと肩を叩かれる。
「お疲れー」
「神宮さん。お疲れ様です」
「また、無茶したね?」
満面の笑みでニッコリ言われて、思わず一歩後退りした。
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