act.1

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「う、浦和く…」 心臓、止まるかと思った。 五月の夜はまだまだ暑さとは程遠いはずなのに、急に体が熱を持ちはじめる。 「…」 「あ、ありがとう。助かった」 ぎこちないながらも笑顔を向けたけど、当然浦和君は同じようには返してくれなくて。 ただジッと私の瞳を見つめるから、どうしたらいいのか分からなくなった。 「え…っと。久しぶり、だね」 「だな」 よかった。答えてはくれるみたい。 彼の手はもうとっくに私の肩から離れてるのに、まだ触られてるみたいにジンジンしてる。 「浦和君は、二次会行くの?」 「いや。明日勤務だから」 「いっちゃんが言ってたけど、浦和君警察官になったんだってね。凄いな」 「別に」 感情を読み取れない声色。私なんかと話したくないのかなと思ったけど、意外にもストンと私の横に腰掛けた。 あれ…どっか行かないんだ。 戸惑い半分、気不味い半分。 さっきまで騒がしく感じてた周りが、急に静かになったような不思議な錯覚を覚えた。 「似合わないって、思ってる?」 「えっ?」 「俺が、警察官なんて」 チラッと、浦和君に視線を向ける。端正で男らしい、綺麗な横顔。ふいに中学の頃の彼の姿と重なって、恥ずかしくなってすぐに逸らした。 「実は、意外としっくりきてる」 「…何で?」 「さぁ?何となく」 「何だそれ」 「アハハ」 あ、私笑えてる。 彼から拒絶されたあの時は、自分でも笑えるくらい泣いた。 もう二度と、会いたくないって思った。 だけどやっぱり、顔を見ると心臓が反応してしまう。 甘さなんてひとつもなかった、苦い苦い私の初恋の思い出。
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