act.2

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ドラッグストアを選んだのに、特別な理由はなかった。接客が好きで、駅構内だから通勤の利便性もいい。 シフト制の不規則勤務ではあるけど、このドラッグストアグループは給与形態もしっかりしてて、ボーナスもちゃんとある。パートやアルバイトの人達の人数も充足してるから、しっかり休みも取れるし。 多店舗への転勤の可能性もあったけど、まぁそれはそれってことで。 「やっほー中川さん。変わったことはないですかぁ?」 商品の補充チェックをしてると、後ろからゆるく声をかけられた。 「神宮さん、お疲れ様です。変わったことは、特にありません」 この前の酔っ払い然り、夜遅くまで開いてるこの店には、意外とああいう変な客も多い。 警備会社と提携してはいるものの、しょっちゅういてくれるわけでもないし。 まぁ、私が後先考えずすぐに飛び出してっちゃうっていうのも悪いんだけど。 このエリアの交番の警察官が神宮さんになってから、彼はよくこうして巡回に来てくれるようになった。 そのおかげもあってか、私が高校卒業後入社した頃よりも、特に夜間の迷惑客遭遇率が減ってる気がする。 そりゃ、制服着たお巡りさんがウロウロしてたら、流石の酔っ払い達も騒ぐ気にはなれないよね。 「んー?どしたの中川さん。俺の顔ジッと見て。もしかして、カッコよさに気づいちゃった?」 「アハハー」 …この、チャラささえなきゃ。仕事できるいい人なんだろうけどなぁ。 よく言えば、親しみやすいのか。 「思いっきり愛想笑いだね中川さん」 「そんなことありませんよ?神宮さんはカッコよくて頼りになるって、みんな言ってますから」 テキパキと商品整理の手を止めることなく、顔だけを彼に向けてニッコリと営業スマイルを浮かべた。 「みんな?中川さんは?」 「もちろん、私もそうです」 「じゃあ今度ご飯行く?」 「アハハー」 天性のタラシか何かなのかな。見た目がいい分、ちょっとシャレにならないような気もする。 私じゃなきゃ、こんなの冗談で済まされないよ。
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