act.2

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いっちゃんからの誘いを断った日から一週間が過ぎて、今日は平日休み。 いつもは適当にしかしない部屋の掃除や溜まった洗濯を終えて、特に目的もないけど街でもぶらつこうかなと着替えて家を出た。 せっかくだし今日は、仕事先の駅とは違う方向に行ってみよう。遠出ってほどじゃないけど、気分が変わってワクワクする。 六月の午前中は、爽やかだ。街路樹に植えてある白いアベリアが笑ってるみたいに見えて、思わず頬が緩んだ。 とりあえず、本屋にでも寄ってみようかな。この辺りだと、家の近くにはない大型書店があるし。 そう思って足を踏み入れた本屋で、私は予想もしていなかった人物と遭遇した。 「あ、中川さんじゃん!」 「え、もしかして神宮さんですか?」 「そうです、神宮さんです」 ニカッと歯を見せて笑う彼は、相変わらず爽やか。けど制服じゃないから、正直一瞬誰だか分からなかった。 「超偶然だね。今日は仕事休みなの?」 少し大きいシルエットの長袖Tシャツに、細身のジーンズ。ヘアスタイルもいつもみたいに横に流すようにセットされてなくて、プレーンマッシュみたいな重ための前髪。 普段から可愛らしい整った顔立ちだと思ってたけど、私服だとそれが一層際立って見える。 ていうか、誰もこの人が警察官だなんて思わないだろうな。 「なぁにー?ジッと見つめちゃって。私服の俺に見惚れちゃった?」 「そうですね、とても素敵だと思います」 茶化すようにそう言った神宮さんに、私は至って真面目な顔で答える。 瞬間、神宮さんはちょっと困ったように眉根を寄せた。 「あ、質問答えてませんでしたね。今日は休みなので、ちょっとフラフラしようかなって。神宮さんもお休みですか?」 「ん?あぁ、そう。俺も今日は公休日なの。でもまさか中川さんに会えるなんて、なんかこれ運命感じない?」 「アハハー」 「お、出たな?必殺誤魔化し愛想笑い」 「何なんですかそれ」 神宮さんが変なこと言うから、思わず笑っちゃった。
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