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気まずくなるかなって思ってた神宮さんとのご飯は、意外にも話が弾んで。
いや、考えてみれば意外でもないか。神宮さんは人当たりがよくて話し上手の聞き上手だし、ウチで暴れたお客さんを諫めるのとかもいつも上手くて、私とは違うなって尊敬するもん。
私に、気を遣ってくれてるんだ。
「寺田店長から聞いた時は、心臓止まりそうだったからね。中川さんが万引き犯に馬乗りになってますってさ」
「あの時はもう、無我夢中で。今思うとどうしてあんなことができたのか、自分でも不思議です」
「もう、ウチの署内では中川さんとっくの昔に有名人だからなぁ」
「本当、いつもご迷惑をおかけしてます」
「いえいえ、こちらこそ力不足ですいません」
「アハハ」
神宮さんの声色って、何ていうかこう落ち着く感じするんだよね。
大人の男の人にしては、少し高めなのかな?
ーー中川
この間の、浦和君の声。昔と全然違った。低くて、私とは全然違って、聞いてると胸がドキドキして…
って、何で今思い出すの!バカ!
「中川さん?急に挙動不審だけど、どうかした?」
「あっ、い、いえ!あの馬乗りになった時のこと思い返して恥ずかしくなっちゃって!」
ちょっと誤魔化し方厳しいかなー?って思ったけど、神宮さんは特に気にしてないみたいだった。
「ホント中川さんって、唯一無二って感じだよね」
「よく分かりませんそれ…」
「真面目で頑張り屋で正義感の塊で最強女子って感じなのに、ふとした瞬間パッとどっかに消えてなくなりそうな感じするし」
「ますます分かんない…」
「まぁまぁ。褒めてるから」
「そうなんですか?」
「おまけに、鈍い」
「鈍…っ!?」
褒めてないじゃん、悪口じゃん!
「いーんだ。踏み出した時点で、長期戦は覚悟の上だから」
神宮さんは頬杖をついて、やたらと甘い顔で笑うから困ってしまった。
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