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「はい、はい、場所は…」
神宮さんの言う通り、110番をして詳細を伝えた。すぐに、救急車も向かうと言ってくれた。
ここからじゃ、ハッキリとした詳細は分からない。
白い車が、歩道に乗り上げて道路沿いにある店に突っ込んだみたいだけど。
神宮さんには、危険だから来るなって言われた。だけどこのまま、何もしないでただ運転手や巻き込まれた人達の無事を祈るだけなんて、そんなの嫌だ。
「…ごめんなさい、神宮さん」
怖いけど、私にもできることがあるかもしれない。
震える手をギュッと握り締めて、私は事故現場に駆け出していった。
「大丈夫ですか!?」
周囲には、たくさんの人だかり。スマホを掲げた野次馬達を押しのけて、私はすぐ側に座り込んでる人に声をかける。
神宮さんは「近づかないでください」と大声を張り上げながら、グッタリしてる運転手らしき人に声をかけてる。
私には、気づいていないみたいだ。
「無理に動かさない方がいいです!すぐに救急車が来ますから!」
「あ、じゃあこっちに!植え込みのところに座ってください」
「大丈夫?パパとママはどこ?お姉さんが連れてってあげるから、おいで」
「そこは破片が散って危ないです!入らないようにしてください!」
心臓が、震えてる。気を抜いたら取り乱してしまいそうな気持ちを、グッと堪えて上を向いた。
怪我したのは、私じゃない。
痛いのも怖いのも、私じゃない。
今は、頭で考えちゃダメだ。
私は、私ができることをせいいっぱいやらなくちゃ!
無我夢中で体を動かして、声を上げる。そうしているうちにけたたましいサイレンの音と共にパトカーや救急車が次々に到着して、思わず安堵の溜息が溢れた。
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