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救急センターで治療を受けて、そのまま家路に着いた。軽い捻挫で、歩けないほどじゃなかった。
だけど何となく浦和君の顔が浮かんできて、大人しくタクシーを使った。
「中川さん、大丈夫なの!?」
寺田店長からの着信に出ると、開口一番焦ったような大きな声が聞こえてきた。
「えっ!」
「今神宮さんから店に連絡があってね!中川さんの連作先知らないから、無事かどうか確認してくれないかって」
「あ…っ」
瞬間、顔からサーッと血の気が引いていく。あっという間の出来事で神宮さんに声をかけられなかったこと、今思い出した。
「彼、凄く心配してたよ。ほったらかしにして、申し訳なかったって謝ってた」
「そんな…」
「大体の事情は聞いたけど、やっぱり中川さん飛び出していっちゃったんでしょ?」
「…はい、その通りです。危ないからって神宮さんに止められたのに、私言うこと聞かないで…」
だんだん、声が小さくなっていく。神宮さんは警察や消防が来るまで、率先して指揮をとってた。
神宮さんがいたから、騒然としてたあの場が纏まってたと思う。
やっぱり、凄い人だ。
「神宮さん、中川さんが救急車で運ばれてるのを見たって言ってたけど、ホントに大丈夫なの?」
「念のため乗った方がいいって言われて乗せてもらったんですけど、ただの軽い捻挫だけです。本当に何ともありません」
「気が気じゃなさそうだったから、連絡した方がいいかもしれない。番号聞いておいたから」
「すいません、ご迷惑をかけて」
「せっかくの休みに大変な思いしたね。僕は、中川さんのそういうところ、凄いって思ってるよ。でも、一番は自分を大切にしてね?」
「ありがとう、ございます」
親が子供に諭すみたいな、優しい言い方。さっきまで緊張してたのもあって、思わず泣きそうになってしまった。
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