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「中川さん!?今どこ!?病院は!?」
寺田店長から教えてもらった番号にかけると、ワンコールで繋がった。
「あ、あの」
「怪我したんでしょ!?大丈夫!?マジでごめん俺…っ」
さっきまで迅速で的確で冷静だった神宮さんとは全然違う、凄く焦ったような声。
途端に申し訳なさが込み上げてきて、思わずスマホに向かってガバッと頭を下げた。
「勝手な真似をしてご迷惑をおかけして、本当にすいませんでした!」
「中川さ」
「動かないよう言われていたのに、私…」
「ハハッ、中川さんならそう言うと思ってた」
一瞬の沈黙の後、神宮さんは気の抜けたような優しい笑い声を上げた。
「怪我は大丈夫?」
「本当に、何ともないんです。うら…えっ、と、警察の方に念のために診てもらうように言われただけで。今はもう、家に帰っています」
何となく、浦和君の名前を出すことは躊躇われて。神宮さんは特に気にする様子もなく、相槌を打ちながら私の話を聞いてくれた。
「俺が悪かったね。中川さんがどういう行動を取るのか、分からないわけじゃないんだしさ」
「…面目ないです」
「君の長所だよ。誰にでもできることじゃない」
「神宮さん…」
「でも。救急車に乗ってる中川さんの姿を見て、俺の寿命は一年くらい縮みました」
「ご、ごめんなさい」
「アハハ」
神宮さんは、優しい。言うことを聞かなかった私を、本気では責めなかった。
本当は、それに甘えちゃダメだって分かってる。
だけど、体が言うことを聞かなかった。
「中川さん。ご協力いただき、ありがとうございました」
「あっ、いえ。そんな…えっと、恐縮です」
「フフッ」
「アハハ」
そういえば、これって神宮さんのプライベートの番号なんだ。
てっきり、仕事用か何かだと思ってたけど。
何から何まで気を遣わせてしまって、ホントに申し訳なかったな。
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