act.2

11/14
前へ
/207ページ
次へ
「中川さん!?今どこ!?病院は!?」 寺田店長から教えてもらった番号にかけると、ワンコールで繋がった。 「あ、あの」 「怪我したんでしょ!?大丈夫!?マジでごめん俺…っ」 さっきまで迅速で的確で冷静だった神宮さんとは全然違う、凄く焦ったような声。 途端に申し訳なさが込み上げてきて、思わずスマホに向かってガバッと頭を下げた。 「勝手な真似をしてご迷惑をおかけして、本当にすいませんでした!」 「中川さ」 「動かないよう言われていたのに、私…」 「ハハッ、中川さんならそう言うと思ってた」 一瞬の沈黙の後、神宮さんは気の抜けたような優しい笑い声を上げた。 「怪我は大丈夫?」 「本当に、何ともないんです。うら…えっ、と、警察の方に念のために診てもらうように言われただけで。今はもう、家に帰っています」 何となく、浦和君の名前を出すことは躊躇われて。神宮さんは特に気にする様子もなく、相槌を打ちながら私の話を聞いてくれた。 「俺が悪かったね。中川さんがどういう行動を取るのか、分からないわけじゃないんだしさ」 「…面目ないです」 「君の長所だよ。誰にでもできることじゃない」 「神宮さん…」 「でも。救急車に乗ってる中川さんの姿を見て、俺の寿命は一年くらい縮みました」 「ご、ごめんなさい」 「アハハ」 神宮さんは、優しい。言うことを聞かなかった私を、本気では責めなかった。 本当は、それに甘えちゃダメだって分かってる。 だけど、体が言うことを聞かなかった。 「中川さん。ご協力いただき、ありがとうございました」 「あっ、いえ。そんな…えっと、恐縮です」 「フフッ」 「アハハ」 そういえば、これって神宮さんのプライベートの番号なんだ。 てっきり、仕事用か何かだと思ってたけど。 何から何まで気を遣わせてしまって、ホントに申し訳なかったな。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1159人が本棚に入れています
本棚に追加