act.1

3/15
前へ
/207ページ
次へ
ーー 「いらっしゃいませー!」 「お姉さん、ちょっとお伺いしたいんだけどねぇ」 「はい!」 中川(アマネ)二十四歳。短大を卒業後、このドラッグストアの正社員として毎日一生懸命働いてる。 ーー周ってホント、正義感の塊だよね 今までの人生で何回、こんな感じのセリフを言われただろうか。 いい意味でも、悪い意味でも。 「あっ、ごめんなさい」 「いってぇな!」 ふと店内の奥で聞こえた低い声。陳列整理していた手を止めて、私は足早にそっちへ向かう。 「邪魔なんだよ、そんなもんで店うろうろしてんじゃねぇよ」 時刻は、夕方。絡んでる方の中年男性は、ちょっと様子が普通じゃない。その正面で怯えているのは、ベビーカーを引いている女性。 なるほど。瞬時に状況を理解した私は、笑顔で近づいた。 …うわ、酒臭い。これ話し合いとか無理だわ。 「お客様、どうされました?」 「あっ!あの…っ」 ベビーカーを引いた若い女性が、安堵の表情を見せる。対照的に、男性の方は一層眉を吊り上げた。 「こいつのベビーカーが足に当たったんだよ。これ、傷害だろ?警察呼んでくれよ」 「おケガはありませんか?」 「だからそういう問題じゃねぇんだよ!」 「ぶつかったことは謝ります!でも、凄くフラフラしてて…」 「あぁ!?俺が悪いってのか!?」 ますますヒートアップする男性から庇うように、女性の前に立った。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1159人が本棚に入れています
本棚に追加