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ーー
「いらっしゃいませー!」
「お姉さん、ちょっとお伺いしたいんだけどねぇ」
「はい!」
中川周二十四歳。短大を卒業後、このドラッグストアの正社員として毎日一生懸命働いてる。
ーー周ってホント、正義感の塊だよね
今までの人生で何回、こんな感じのセリフを言われただろうか。
いい意味でも、悪い意味でも。
「あっ、ごめんなさい」
「いってぇな!」
ふと店内の奥で聞こえた低い声。陳列整理していた手を止めて、私は足早にそっちへ向かう。
「邪魔なんだよ、そんなもんで店うろうろしてんじゃねぇよ」
時刻は、夕方。絡んでる方の中年男性は、ちょっと様子が普通じゃない。その正面で怯えているのは、ベビーカーを引いている女性。
なるほど。瞬時に状況を理解した私は、笑顔で近づいた。
…うわ、酒臭い。これ話し合いとか無理だわ。
「お客様、どうされました?」
「あっ!あの…っ」
ベビーカーを引いた若い女性が、安堵の表情を見せる。対照的に、男性の方は一層眉を吊り上げた。
「こいつのベビーカーが足に当たったんだよ。これ、傷害だろ?警察呼んでくれよ」
「おケガはありませんか?」
「だからそういう問題じゃねぇんだよ!」
「ぶつかったことは謝ります!でも、凄くフラフラしてて…」
「あぁ!?俺が悪いってのか!?」
ますますヒートアップする男性から庇うように、女性の前に立った。
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