私は、昔からこうだ。頭より先に、体が動いてしまう。
よく怪我をしてた私に、母は「お父さんが取り憑いてたりしてね」なんて笑いながら言ってたけど。
昔より歳を重ねた今なら分かる。あの母の笑顔の中には、どことなく哀しげな表情も混じっていたということに。
大切な人を傷つけても、例え誰にも感謝されなくても、私は。
後悔しないように、生きていきたい。
自己満足だとしても、困っている人がいれば助けたいと思ってしまう。
きっと一生、私はそうなんだろう。
「…あれ」
無意識に捻った足首をさすりながら物思いに耽っていると、不意にインターホンが鳴った。
モニターを確認した途端、痛みなんて忘れて。
私は一目散に玄関へと走った。
「う、浦和君っ」
「…っす」
ちょっとバツが悪そうに頬を掻く浦和君の髪の毛、ちょっと変な癖がついてる。
あ、そっか。勤務中は帽子被ってるからか。
何か、可愛い。な。
「…」
「…」
「あ、ご、ごめんね!急に黙ったりして。ちょっとビックリしちゃって」
変なこと考えてたのがバレないようにしたくて、いつもよりかなり早口になってしまった。
「いや、ごめん。こんな時間に。あの事故の処理が終わんなくて」
「怪我した人達は、大丈夫だったの?」
「幸い、死者も重傷者もいなかった。運転手も、軽い骨折で済んだって」
「そっ、か…よかった」
ふぅーっ、っと長めの溜息が漏れる。巻き込まれた人達は気の毒だったけど、命が助かってホントによかった。
詳細とかは、あんまり聞かない方がいいよね。守秘義務があるし。
「そういえば、どうしてここ…」
「同級生から、聞いて」
「あ、そうなんだ?」
「悪い、勝手に」
浦和君の表情が少しだけ歪んで、同時に彼の右手にあるビニール袋がカサッと音を立てた。
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