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翌週の同じ時間。
つまり、あのシャープペンを失くしたと気づいて大教室に戻った休み時間に、僕はまたそこへ行った。
変な奴だと思われるだけかもしれないが、学生課で遺失物を確認しても出て来なかったし、何かあれの行方のヒントでもないかと思ったのだ。
今さら落ちているわけもないし、あの時の上級生が同じ席に居るとも限らないのだから意味はないのだろうが――――。
何となく周りを見回しながら通路を歩いていると
「ねえ!」
と通路際に座っていた女子学生が僕に声をかけた。
「はい」
「きみ、先週シャーペンここに忘れた子だよね?」
「……そうですけど」
「もしかして、これ探しに来た?」
その人がごそごそと鞄の中から取り出したのは、件のシャープペンで、意味が分からず瞬きをしていると
「絶対分かんないよって思ったけど、凄いな。史香の言った通りだ」
はぁ、とその上級生は呆れとも感心ともつかない溜息を吐く。
よく見ると、先週僕に芯の違うシャープペンを渡した上級生の隣に居た人だと思い出す。
「偶然、全く同じの持ってたんだって。で、授業中使ってるうちに違うって気づいたんだけど、どこに居るかも分からないし届けようがないって気にして。でも、結局同じシャーペン交換しただけなんだから大丈夫だよ、ってあたしは言ったんだけど。もしかしたら気づいてて今日来るかもしれないから、そしたら渡してって預かったの。彼女、今日就活で休みで」
「……そう……ですか……」
渡されたシャープペンは、僕が探していたもののような、違うもののような、不可思議な感覚だったけれど、こちらは一週間持って歩いていたものを差し出すと
「確かに。渡しとくよ」
と、『ふみか』の友人らしい上級生は微笑んだ。
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