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「なあ、蓮見。お前好きにやっていいから、全部作ってくれねえ?」 「それじゃ学習にならない」  今度は別の演習。男子学生4人のグループ。  ほら、だから言っただろ。と隣の男子がしかめ面をした奴に囁く。  聞こえている。 「じゃ、俺ら3人でやるから。お前またひとりでやってくれる。その方がいいだろ。教授にはお前から言っといてよ」 「分かった」  ついでに言えば、君らにお前呼ばわりされる筋合いはないんだが、と言うと、返事の代わりに長机の脚を蹴って彼らは去って行った。 「――――そう言われてもねえ。グループでやってくれっていうのは、皆で話し合って正解を導き出して欲しいからって意味なんだよ。分かる?」 「それは分かってます。しかし、相手にやる気がないなら、どうしようもないので」  放課後。50がらみの教授は、染みの浮いた頬に薄い笑みを載せて言った。 「そういう、君の態度も良くないんじゃないのかい?確かに実力には差があるけど、だからこそお互いに違う考えに触れて欲しいという」 「分かりました。検討します」  一礼して踵を返した。  相互理解。そんなものは要らないし、歩み寄りようがないなら無意味だ。  教授室を出てドアを閉めると 「失礼しました」 隣の教授室から出て来た女子学生の声と自分のが重なった。  思わず見ると 「あ!」 とその人は漫画のように口を開けて僕を見る。 「あれ、あの……あのシャーペンの子だよね!?」 「え?」  肩より少し長い黒髪は艶やかだが、とりあえず程度に施した化粧は口紅も取れかかっていてあまり意味はなく。  けれど、それ自体ものを言いそうな眼がくるりと輝いて僕を見るのが、何か心地良かった。  じきに、思い出した。 「もしかして、同じの持ってた……方ですか」 「そうそう!気になってたの。あたしは消しゴムすごく使う方で擦り減ってるんだけど、貴方のは全然使ってなかったから、それで気づいたんだけど」  その時、教授室の中から大きな咳払いが聞こえて、その人『ふみか』は苦笑いして肩を竦め、小声で言った。 「学食でも行かない?」  
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