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拾われた仔猫は、連れ帰った勝仁の家で飼われる事になった。
僕の住むマンションも、武の住む公営住宅も、ペットを飼う事はできなかったから、勝仁の家に連れていくしかなかったのだ。それに勝仁は自分が見つけたんだと言わんばかりに、仔猫を放そうとしなかった。
猫は勝仁の家を訪れる度に大きくなり、あっという間に成猫と同じ大きさになった。おやつやおもちゃでじゃれていたのも最初のうちだけで、その頃には僕達が行っても見向きもせず、我関せずといった顔で部屋の隅で毛づくろいするようになった。
まるで最初から自分はただの猫で、おかしなところなど何一つありませんと遠回しに主張しているように見えた。僕達と一緒に体を探して歩き回ったミイの面影は、猫のどこにも見当たらなかった。
唯一変わらないのは、勝仁に名付けられたミイという名前だけだ。
猫に化かされていたのか。
あるいは集団幻覚でも見ていたのか。
僕達に答えがわかるはずもなく、いつしか誰もあの日の出来事には触れなくなった。大人達に説明したところで、誰も信用してくれないのは考えるまでもなかった。
「よし、対戦しようぜ。一五〇CCのサンダーカップな」
「そんなの無理だよ。せめて一〇〇CCにしろよ」
勝仁の部屋でゲームに興じつつ、僕は横目で猫の姿を追う。
猫は勝仁のベッドの上で、子供の頃よりもくっきりとしたサバシロ柄の体を丸めて、気持ち良さそうに目を細めていた。
その姿があの日見たミイと名乗る女の子に重なって、僕の胸はずきんと痛んだ。
まるであの女の子そのものが、勝仁の部屋で一緒に暮らしているように思えてくるのだった。僕達が帰った後、勝仁の前でだけ女の子の姿に戻るんじゃないかなんて、そんな変な想像が湧いてくるのだ。
もちろん勝仁はそんな事一言も言わなかったし、僕もそんな馬鹿馬鹿しい妄想を口に出そうとは思えなかった。
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