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そこで気が付いてしまった。私はひどくしてやられた表情を作り、髪をぐしぐししつつ言葉を続けた。
「博士だ……」
その瞬間、大きな音で扉が開き、怒鳴り声が掛かる!
「何やらかしたのっ!?」
妹だ。私に『やらかしたのっ!?』と、断定するひとは他にいまい。私はまだ動悸を打つ胸に手を当ててから、妹に言った。
「うん、近所迷惑だからね。少しトーンを押さえよう」
「はあ!? いっま、なにが起きたと思ってんの!?」
なだめようとする私に、妹はすごい表情でにらんでくる。
あのね、その顔はだめだよ?
うん、お友達が逃げちゃうからね、ツツシミを持ちなさいな。
「あー……。あのさ、今回は私も被害者なのだよ。はぁ……びっくりしたぁ」
動悸を打ちすぎたからか胸が痛い、胸に当てた手で擦るようにしてやる。それだけでも気持ち落ち着いてくるのだから、からだって不思議だと思う。
そんな私のぼんやりを、別な感じに受け取っただろうか? 妹の目が吊り上る。
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