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8月13日・ブラックアウト
8月6日午後5時、俺は退院した。
花瓶に生けてあったディアスキアは日中親に家に飾っておいてもらった。あの花は、僕に贈られたものじゃないけど、家の花瓶に生けた。
俺は家族一緒に寿司屋に行った。退院祝いということで寿司になったらしい。夜ご飯である寿司を俺は腹7分目まで満たした。
家に着いたのは午後7時、家の電気をつけた瞬間、灯りが全て消えた。
『ブラックアウト』だった。この街は暗闇に包まれた。
「みんな大丈夫か!?」
父が俺らを探していた。暗い中家族を見つけるのが大変だろうに。
俺は家族には内緒で玄関に置いてあった懐中電灯と俺の誕生花であるジニアを持って家を飛び出した。
走って向かった先は、俺の通っている中学校だった。この時間帯は先生がおらず校舎内は無人地帯だ。
俺は低いフェンスを超えて校舎に侵入した。1階の1年1組の窓から校舎に入った。ここの窓は何故か閉まらずガムテープで固定されてたが、誰かがか剥がしたのかすぐに窓は開いた。
屋上をめざしながら足早に廊下を歩いた。2階の踊り場には
『生徒会長候補・柊 瀬雪、転校で辞退。』『第二候補者・卯月 一翔で決まりか?!』という見出しの放送局の新聞が貼ってあった。
――転校したなんて嘘、きっと先生が着いたんだろう。騙されるなんて、みんな馬鹿だな。
冷たい心で新聞と先生、放送局のやつを内心で罵った。
―――「卯月!ありがとう!」
何故かそう聞こえた。屋上の方から亡きはずの瀬雪の声が聞こえた。階段を駆け上がる足がさっきよりも早くなった。幻聴でもいい、幻想の世界だとしてもいい、瀬雪に会いたい。
想いは強く煮えたぎり心拍数が上がる。屋上の扉に着くのが、あっという間だった。
――早く、早く会いたい!
扉を開けようとした時だった。
『少しずつでいいから、前に進むんだ。』
悠瀬くんの言葉を思い出した。
悠瀬くんの言ったはずの言葉は何故か瀬雪が言っているようにしか感じなかった。
俺の中で謎が解けた。この違和感が。
瀬雪の誕生花であるディアスキアの花言葉と瀬雪の優しさが作った言葉を、悠瀬くんを通して伝えてくれたんだ。こんな解釈、ただの俺得の都合のいいものなのかもしれない。
でも、俺は瀬雪の気持ちがわかったんだ。
深く息を吸って、気持ちを切り替える。俺の誕生花・ジニアをズボンポケットに潰れぬように隠して、扉に手を伸ばした。
――ありがとう、瀬雪。前に、進むよ。
扉を優しくいつも通りに開けた。
そこには、『瀬雪』がいた。しかも煙草を吸いながらこちらを見つめて。
――瀬雪、
「煙草、やめたら?」
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