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婚姻届
あなたと向かい合ってその1枚の紙に記入していく。
緊張気味のあなたをちょっとかわいいと思いながらそのちょっと角張った不器用そうで大きさもバラバラな文字を見つめた。
「……たぶん僕のところは全部書いたので……木崎さんもお願いしていいですか?」
「はい。ありがとうございます」
微笑むとあなたはちょっと顔を赤くしてから書いていたペンと紙をくれる。
その時にちょっと指先が触れるだけで、あなたはピクッと跳ねて赤くなった。
「すいません」
初々しいあなたの反応に思わず笑みが零れる。
あなたは呟くような声で謝って小さく縮こまった。
書きながらしばらくして視線を感じて顔を上げると、あなたと目が合ってあなたは慌ててまた下を向く。
「何か違いましたか?」
「いえ!綺麗な字だな、と」
書きながら声をかけるとパッとあなたが顔を上げて微笑んだ。
「三嶋さん。……いえ、直道さん」
「はい!……へ?」
「だって、これから同じ苗字ですよ?いつまでも三嶋さんではおかしくないですか?」
想像通りの反応に笑いを堪えると、あなたは照れたように落ち着きなく視線を彷徨わせる。
「私も名前で呼んで下さいね?」
「え!?あ……」
あなたの顔が一気に赤くなってキュンとした。
本当、このかわいい人……どうしましょう?
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