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新生活
あなたと緊張しながら市役所に入る。
「あの……これ……お願いします」
落ち着きのないあなたの声を聞いて私も更に緊張した。
微笑む役所の人に「おめでとうございます」と言われても私たちはぎこちなく会釈することしかできなくて
「……木崎さん」
「もう、私も“三嶋”ですよ」
「あ、そうですね。えっと……」
慌てるあなたを見て笑いが込み上げる。
「……ゆ……由依さん」
「はい」
「っ……」
そっとあなたの手に指を絡めると、あなたは真っ赤な顔でこっちを向いた。
私だって赤いことはわかっているからそっとあなたの腕に顔を隠すと、あなたは握った手に力を込める。
「……帰りましょうか」
あなたの言葉で顔を上げると、あなたは優しく微笑んだ。
「僕たちの家へ」
目の前に鍵を出されて私は潤んでくる目元を押さえる。
「共に生きて下さい」
頷いて鍵を受け取ると、私たちはまた互いに照れて顔が見られなくなった。
ぎこちなさ過ぎて不安に思われるかもしれない。
それでも、私たちは2人で歩き出した。
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