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到着したのはフルーツ農園で正直あなたのイメージではなかった。
「4人で一緒に居てもなんだし別行動にする?」
紗希ちゃんの彼氏の徳馬くんがそんなことを言い出してチラッとあなたを見るとあなたもこっちを窺っていて私たちはそれぞれ顔を赤くする。
「三嶋!足元気をつけてちゃんとエスコートしろよ!」
そんな風に言われて手を繋がされたけど、私たちはお互い慌てて離してしまった。
ちょっと落ち込んで、でも、せっかく来たんだから楽しもうとたくさんぶら下がる巨峰の袋を見つめる。
意識を巨峰にして歩いていた私は……
「危ないっ!!」
足を滑らせて、気づいたらあなたの腕の中に居て私たちはどちらもパニック。
「「す、すいません!!」」
2人で謝って近くに居た老夫婦に笑われた。
恥ずかしさで消えてしまいたかったけど、意外としっかりしたあなたの腕の感覚が忘れられなかった。
ドキドキしながらあなたを見るとあなたはメガネを上げてから私を支えるために手放したハサミと器を拾う。
「……いいの……ありました?」
「あ、はい。あれとか……どうですか?」
「いいですね」
たったそれだけ。
でも、やっとまともな会話をした気がした。
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