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空いているテーブルを見つけて向かい合わせになる。
それだけでまた緊張して
「た、食べますか?」
あなたもかなり緊張していた。
お互いに巨峰に手を伸ばして手が触れて慌てる。
さっき腕の中に居たのなんて私の勝手な妄想なんじゃないかと思った。
それでも巨峰を口にすると
「甘っ!!」
あまりにものおいしさに思わず声が出る。
「本当に!こんなおいしいの僕、初めて食べました」
「私もです!」
2人で食べたらあっという間で、「もう1房見に行きましょうか?」あなたの笑顔を初めて見た。
「これなんてどうですか?」
あなたの声が聞こえて振り返ると、あなたはすぐ目の前で屈んでいて……私たちは鼻の頭がぶつかって慌てる。
パニックになると人間って訳の解らない行動をして余計に慌てることになるらしい。
私たちは距離の近いまま焦って……目はお互い反らしているのに手首を掴まれてもう頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「あ、わっ……あの……好きです」
それはあなたもだったのか、ショートして煙でも出ているかのような真っ赤な顔でキョドりながら口走ったあなた。
「……え?」
「違っ!!いや、違わないけど……えっと……」
ハッとしたように離された手であなたの手を掴むと、あなたはビクッとしてこっちを見る。
「私も……好きです」
なぜか泣きそうになりながら何とか微笑むと、あなたは腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
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