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図書館、博物館、美術館、映画館、水族館……会うとやはり緊張し過ぎてうまく会話ができない私たちはそこら辺の高校生、もしかしたら、中学生……小学生?よりぎこちなかったと思う。
それでも何回かデートを重ね、とりあえず隣に並んで歩けるようにはなった。
たったそれだけ。
でも、デートの後は電話をするようになった。
「小さくていいから僕も魚を飼いたくなりました」
「わかります。あんなゆったりと泳ぐ魚をずーっと眺められたらって……時間を忘れそうでした」
「一緒に暮らしたら水槽も買いましょうね」
「……え?」
聞こえてきた言葉が何度も頭の中で繰り返される。
私の聞き違い?都合よく解釈した?
「いや……えっと……その……すいません」
「謝っちゃうんですか?」
聞き違いではないと思うと寂しくなった。
「……実は僕、5歳で両親を亡くして……僕は親戚の家を転々として育てられました。それでですかね。温かい家庭に憧れがあって……木崎さんと居ると……その……想像してしまうんです。あなたとの生活を……」
聞いている途中から涙が溢れる。
「木崎さん?……すみません。勝手にそんなことを考えて……先走り過ぎて気持ち悪いですよね」
「違うんです」
トーンの落ちたあなたの声を聞いて私は慌てて否定をした。
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