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「そんなことないだろう。結衣子も十分頑張ったよ。……今まで父親を疎ましく思って母親のことは考えてなかったけどさ……。少なくとも母親はあんな思いをして俺を産んでくれたんだよな」 「そうだね。……赤ちゃん、いおりくんのお母さんに見せに行こうか」 「そうするか。どんな反応するかはわかんないけど」  穏やかにフッと笑う彼。 「可愛いかった? いおりくんの血を引いた赤ちゃん」  どんな答えが返ってくるのか、少し怖かったけど聞いてみた。 「すげぇ、可愛いかった。溺愛しちゃいそう。仁志社長の気持ちがよくわかる。幾つになっても可愛くて仕方ないんだろうな。……ありがとう、結衣子」 「うれしい。……赤ちゃん産んでよかった」  今までの不安な気持ちや産むときのとんでもない痛みも飛んでいく。 「いい加減『赤ちゃん』じゃなくて『恵実子』って呼べよ。せっかくめちゃくちゃ必死に考えて名前付けたんだからさ」 「えぇ? 本当に『恵実子』ちゃんにするの? やっぱり『恵実』ちゃんの方がいいんじゃない?」  彼は「子」を付けると譲らないけど、私は「子」を付けない方が可愛いと思っていた。
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