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「うーん。庵さんの好きなハンバーグにしましょうか。あ、でも、せっかく時間あるし牛肉の赤ワイン煮込みにしようかな」  無意識なのか、わざとなのか、嬉しくなるようなことをサラッと言われ笑みが溢れる。 「どっちもいいな。結衣子が食べたい方でいいよ」  結衣子と2人、穏やかな休日を過ごした。  その翌週。予定通り婚姻届を提出し俺は『仁志庵』になった。違和感がすごい。  夜、お祝いに、と数日前に予約をしていたレストランに行き美味しい料理を堪能する。「やっぱりプロの味には敵いませんね」と苦笑いしていたが、結衣子が作ってくれた赤ワイン煮込みもそこそこ美味しかった。 「なんか結婚したっていう実感が湧きませんね。私、何も変わらないし」  家に帰る途中、隣を歩く結衣子が小さく笑う。 「そうか? まぁ、式挙げてないし、指輪も結衣子しかしてないからな」 「早く結婚指輪、したい……ですね。2人でお揃いの指輪」  甘えたように俺の指に絡めてきた。その小さな手を握ると嬉しそうにクスッと笑う。  可愛すぎ。今日はもう我慢できない……かも。  あれ以来、結局抱いていない。仕事が忙しい時期だし、セーブをしていたのもあるが。今日は酒も入ってるし欲が抑えられない気もする。
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