1908人が本棚に入れています
本棚に追加
/249ページ
控えめに言った結衣子の言葉に、その日も加減しながら早めに終える。
「庵さん……物足りない、よね?」
「ん?」
「本当はもっとしたいん……ですよね。ホテルで見たやつみたいに、激しく」
後処理をしていると遠慮がちに声をかけてきた。
「いずれ、な。今はこれでいい」
「……ごめんなさい」
落ち込んだような静かな声が聞こえ、咄嗟に振り向き、後ろにいた結衣子を片手で抱き寄せる。
「謝るな。いいんだよ、これで」
「……大好きです、庵さん」
「俺もだよ」
今にも泣き出しそうな結衣子に何度もキスをした。
桜が散り始めた4月最初の土曜日。
「いよいよあと10日か。もう仕事も落ち着いたんだろう?」
結婚式場で最終打ち合わせを終え、2人でのんびりと歩いて駅に向かう。天気もいいし気持ちいい。今日は小道に入らず大通りを歩いた。
「そうですね。ようやく落ち着きました。楽しみですね」
ニコッと笑った結衣子の背後に大きめの公園が見える。
「そうだな。……あの公園突っ切って行くか。駅までショートカット出来そうだし」
「いいですね。桜もまだ咲いてるし」
公園なら以前のような気まずいことにはならないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!