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 控えめに言った結衣子の言葉に、その日も加減しながら早めに終える。 「庵さん……物足りない、よね?」 「ん?」 「本当はもっとしたいん……ですよね。ホテルで見たやつみたいに、激しく」  後処理をしていると遠慮がちに声をかけてきた。 「いずれ、な。今はこれでいい」 「……ごめんなさい」  落ち込んだような静かな声が聞こえ、咄嗟に振り向き、後ろにいた結衣子を片手で抱き寄せる。 「謝るな。いいんだよ、これで」 「……大好きです、庵さん」 「俺もだよ」  今にも泣き出しそうな結衣子に何度もキスをした。  桜が散り始めた4月最初の土曜日。 「いよいよあと10日か。もう仕事も落ち着いたんだろう?」  結婚式場で最終打ち合わせを終え、2人でのんびりと歩いて駅に向かう。天気もいいし気持ちいい。今日は小道に入らず大通りを歩いた。 「そうですね。ようやく落ち着きました。楽しみですね」  ニコッと笑った結衣子の背後に大きめの公園が見える。 「そうだな。……あの公園突っ切って行くか。駅までショートカット出来そうだし」 「いいですね。桜もまだ咲いてるし」  公園なら以前のような気まずいことにはならないだろう。
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