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桜が舞う春の穏やかな陽の中、家族連れで賑わう公園。でも俺の心は複雑な黒い気持ちに包まれた。
それから10日後。
「結衣子、綺麗だよ。よく似合ってる」
後ろに大きなリボンが付いた純白のウェディングドレスに身を包む結衣子。
「ありがとうございます。庵さんもカッコイイです」
照れたように笑い俺の横に並んでいる。
「偽物の結婚式を挙げてから5年か。色々あったな」
チャペルに移動する途中で思い出した。
5年前、形だけの『偽物の結婚式』を挙げた事。結衣子に気持ちがありながらも離れてリセットした事。長谷川さんがきっかけを与えてくれて生き方や考え方を改めた事。
「そうですね。信じられません。またこうやって庵さんと結婚式を挙げるなんて。やっぱり運命……なんですかね」
「かもな。正直、結衣子みたいな女とは恋愛関係になることはないと思ってたけどさ……親の言いなりでなにも考えてないし……すげぇ子供だったし」
結衣子も色々なことがあったのだろう。俺にはわからない色んなことが。
「そんな私に変わるきっかけをくれたのは庵さんですよ。このままじゃダメだ、って。今の私は庵さんが作ったんです」
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