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 日本からロンドンは移動時間が長い。疲れたのだろう。ホテルに着くと結衣子を先に部屋に向かわせ、俺はレストランの予約をしてから部屋に向かった。  部屋に入るとスーツケースの整理をしている結衣子がぼうっとクローゼットを眺めている。あの濃い紫色のシンプルなドレスがポツンとひとつだけ掛かっていた。 「そのドレス、持ってきたんだな。レストランに着て行くのか?」  笑いながら荷物の整理を始めると——。 「……庵さん」  泣きそうな顔で急に抱きついてきた。 「どうした?」 「……」  よくわからない。でも優しく背中を摩る。 「ごめんなさい。ご飯食べに行きましょうか」  すぐに俺から離れて薄く笑うとドレスに着替えだした。珍しく俺の居る前で着替える結衣子。いつもは恥ずかしがってそんな事はしないのに。思えばロンドンに着いてから、どこかぼんやりとしている気がする。それでも夕食を食べにホテル内のレストランに向かった。  食事中も口数は少ない。淡々と食事を進めている。 「ルームサービスにすればよかったな」 「……いえ。大丈夫です。美味しいですね」  消えそうな笑みを浮かべている。大丈夫なようには見えない。
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