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私も彼もロンドンは慣れている。分担して単独行動をすることもあった。
トイレから出て手を洗い、何気なく鏡を見る。そこに映った姿に昔の自分が重なり合ってしまった。急に悲しさが胸に広がる。
そっか、そうだよね。ロンドンっていつも辛くて寂しくて……。
いろんな記憶が蘇ってくる。蘇るという表現すら違うのかもしれない。僅か半年前……あのホテルのバーで彼の後ろ姿を見掛けて、苦しい気持ちでロンドンから日本に帰ったのだから。
私にとってロンドンは、辛くて、悲しくて、泣きそうで、泣いていて……。いつもそんな気持ちで過ごした場所なのだ。
でも、今回は違う。庵さんと一緒に来たんだから。結婚して、指輪もあるし。
気を取り直してトイレを出ると荷物の受け渡し場所に向かう。
庵さん、どこかな?
キョロキョロと辺りを見回すけど見当たらない。
『庵さんが居るわけないじゃん。リセットしたんだよ。私の元からいなくなったんだから』
そんな心の声が聞こえた。途端に今ここで起きている事が現実なのかわからなくなってくる。もしかしたら夢を見ていたのかもしれない。自分に都合の良い、あまりにも幸せな夢を。
彼が少し離れた場所から手を振って私に合図しているのが見えた。手を振って応えたけど……。
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