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「幸せですよ。でも……あの時、庵さんはどこかに行っちゃったじゃないですか。私は離れたくなかったのに……大好きだったのに……」 「それは結衣子の為で……全部捨ててやり直そうと思ったから——」 「思い出すんですよ! ここに来ると。ずっと貴方に会いたいと思ってた。ここに来れば貴方に会える気がして……それでも会えなくて……。会いたくて、会いたくて。何年経っても好きな気持ちは消えなくて……。そんな辛くて悲しい気持ちで過ごした場所なんですよ」  ロンドンに来なければよかった。まさか自分がこんな風になるとは思わなかった。……いや、ロンドンに来なくても、いずれこうなっていたのかもしれない。  徐にソファーから立ち上がり私の側まで来ると、そっと抱きしめてくれた。 「ごめんな。……ごめん」    小さな声で消えそうにポツリと溢す。いつの間にか私はまた泣いていた。 「——そっか。それで初めて一人でロンドンに来たんだな。その時、どこ行ったんだ?」 「フレディに連れて行ってもらった宮殿と……あと近くの公園、それとホテルのレストランと——」 「結衣子の話、もっと聞かせてくれ」と彼に言われ、過去を辿っている。シャワーを浴びた彼とベッドで横になりながら静かにゆっくり話をした。
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