第六章※エロティックな指先

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第六章※エロティックな指先

(あんなひまわりを描いて、ごめんなさい)  許しを乞うように結都は砂宮のシャツに口づけた。  耳の奥からあの旋律が聴こえ、下部に集まる微熱にとまどい、痩せた背中が震える。 (あ、どうして)  腿をすり合わせ、全身に這う嵐のような熱に歯を食いしばる。  シャツの下で胸の中心がピン、と尖り、痛みに似た疼きに惑いながら、そっとシャツの中に手を差し入れた。  砂宮に教えられたように尖りを指先できゅ、と擦ると、先からびりびりと火花が散り、音にならない嬌声が上がる。 (いけない、こんな想像しちゃ) (だめ、なのに) ぴりぴりする快楽にあがらえず、砂宮がこの尖りを摘み、擦り、あの大きな口で含れ、舌で絡め、吸って、舐め上げてくれたらと、結都は目を閉じ想像する。 (あ、あ、だめ)  フローリングに頭をつけたまま、だめ、だめ、と首を振る、いけない、と思っているのに、ふたつの尖りを擦る指先をとめられない。 (あ、あ、すなみや、せんせい)  ズボンの下の小さなタクトが膨らみ、先から溢れる液が腿を伝って、自分のいやらしさに涙が零れた。 (先生に触れて欲しい、撫でて欲しい、先生の大きな手で、絵筆を握るように握って、擦って欲しい) (ちがう、ちがう、いやだ……っ)  首を振る。砂宮を汚したくない。 (先生が好きだから、とても好きだから、絵を描く先生が大好きだから、あの指先で触れられたい、なんて、こんな想像したくない……!) なのに耳の奥で流れ続ける旋律が、砂宮への想いを膨らませ、身体が熱くなる。  指先が奏でさせようとする。 (だめっ……)  がくがくと震える身体を無理に起こし、よろよろと立ち上がった。 (リビングは駄目、ここは先生で溢れてる) 父のピアノ部屋のドアを開け、ピアノにもたれかかる。 (はあ、はあ) ――――天ケ瀬 ――――自分の好きなものはこんな風に形にして残せ。 そうすれば忘れない――――  握りしめていた砂宮のシャツを乱暴に放ち、結都はピアノの上に置かれた父の白紙の五線譜をつかんで、バサリと床に落とした。 「……っ」 ―――交じり合う、色と音が。 (先生) 楽譜に額をつけ、鉛筆を握る指に力を込める。 (頭の中で溢れる音は、僕の曲だ。先生への想いだ) 吐き出しても吐き出しても、鳴り止んでくれない。  溜ってゆく熱と音、全身を震わせる快楽の波。  それなら全ての音を追いかけ拾い上げ、音にして全部吐き出す。  聴こえなくなるまで。
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