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「天ケ瀬君、帰り、みんなでサイゼ寄ってくんだけど、よかったら一緒にどう?」
終業のチャイムが鳴ると同時に橋元に顔を覗き込まれ、椅子から飛び上がる。
「あ、ごめんね。びっくりさせて」
クラスの皆が自分を見ていることに気づき、あわててポケットからスマホを取り出し文字を打ち込んだ。橋元は液晶画面に顔を近づけ、ふんふん、と頷く。
「『担任の先生に呼ばれてて、ごめんなさい』そっか、西井?」
「ごめんでいーし、なさい、はいらねー」
学校一のモテ男だという真原は、ネクタイを緩める仕草すらモデルみたいだ。
「なあ、もし描く道具で分かんないことあったら遠慮せずに聞けよ。天ヶ瀬、初心者なんだろ? 来週油絵だし、砂宮先生油絵はもっと感覚的に指導してくっから」
「へーっ、めずらし! 真原が女子じゃなくて男子に優しくすんの、初めて見た」
「っせ、バカ」
「ちょ、イケメン真原が真っ赤なんだけど?」
「マジかよ真原!」
「っせえ、だって天ヶ瀬ってめっちゃくちゃ綺麗じゃん!」
「うそお、いっちゃった」
「誰が一番最初にいうかなーって、思ってたけど、まさかの真原」
「んだよ、天ヶ瀬、色が綺麗なんだよ。髪も睫毛も最上級の涅色で、肌も雪白だし」
「真原、色フェチだもんねー。でもそんだけじゃないでしょ、見てこの細い腰! 身体のライン、整った指の先まですごーく綺麗。ギリシャの神々が一斉に愛でたに違いない、まごうことなき美少年!」
「美のシンメトリーもバッチリ。教室に天ヶ瀬君入って来た時びっくりしちゃったよね!」
「という訳で、あらためて、よーこそ天ヶ瀬結都君、我が美術専攻クラスへ!」
「天ケ瀬君、ライン交換しよ!」
学校も休みがちで、友達もできなかった。
だからこういうの、初めてで。
バイバイ、と笑顔で皆が手を振ってくれるから結都も七回、手を振った。
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