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空と大地 2日目
二日目
今日は晴れ。快晴。
いつもの土手で、彼 発見。
「こんにちは」
自転車を降りて近づいて、彼の顔を覗き込む。
彼の瞳は不思議そうに私を見上げて、「こんにちは」と言った。
「どこかで会いました?」
私はニコリと笑って首をふる。
「いいえ。はじめまして です」
彼もホッとしたように笑顔を作った。
「はじめまして」
「気持ちがいいですね、ここ」
「でしょ?オレの特等席」
「隣、座ってもいいですか?」
「いいですよ」
寝転んだまま、空を見つめる。
「いつもこうしてますね」
「空を眺めるのが好きなんだ」
「飽きませんか?」
「飽きないよ」
優しい沈黙 春の風。
「あの 名前聞いてもいいですか?」
あまりに動かないもんだから、動かしてみた。
「名前…?」
彼は大きく伸びをして、肺イッパイ空気を吸い込んだ。
「このフカフカのベッドと同じ名前」
「…芝さん?」
彼はプハッと吹き出した。
「犬じゃないよ、オレ」
「じゃあクローバーだ」
「クローバー?」
「うん ほらそこ」
座ったままの私の足元、シロツメ草と一緒に揺れるクローバー。
「葉っぱですか」
「素敵じゃない」
言いながら立ち上がって、私はスカートの裾をパンパンと払った。
「またね、クローバーさん」
にっこり微笑んで、一生 覚えられることのない言葉を口にする。
「空はいっつもキミを見てるよ」
「何だそれ」
春風みたいに笑い返してくれるあの男の子に 背を向けた
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