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空と大地 1日目
一日目
青々と草のしげる河川敷。
大地にペタリと手足を投げ出して空を眺める茶色い髪の男の子。
私はいつも通りの光景に、ふと足を止めた。
自転車から降りて赤い傘ごと彼の顔を覗き込む。
「おはようございます」
「…………………」
彼の瞳は戸惑って、私のこと見上げてる。
「…どこかで会いましたっけ‥?」
ゆっくりと身を起こす彼に半分 傘を差し出した。
「いいえ、はじめまして です。ただいっつも見てました」
「いつも…?」
「はい」
彼は明るくプハッ、と笑う。
「じゃあもしかして、君の片想い?」
「はい」
「だってオレ、ビショ濡れだよ?」
「どうしてビショ濡れなんですか?」
「雨のせいだよ」
笑って空を見上げた。
「雨がね、こう 真上から落ちて来る感覚って、不思議だと思わない?」
「さぁ… 風邪をひきそうにはなります」
「そっか。ダメだよ、風邪なんて」
「キミもね」
「オレは大丈夫。だって、生きることに必要なんだ」
「そっか。大切なら仕方ないです」
「うん、まあね」
ニコリと微笑む彼に
「じゃあ、また明日」
後ろ髪の引かれる思いでその場を後にする。
… 昨日みたいに。
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