12人が本棚に入れています
本棚に追加
3
宮殿の中庭は、捨てられた犬と元の飼い主でごった返していた。そこに、王と心優しき王女が厳かに、まるで裁判を始めるソロモン王のように登場した。
元飼い主たちは、犬が勝手に逃げてしまったとか、赤ちゃんがアレルギーだとか、どうしても手放さなければならなかった言い訳を必死に掻き集めていた。自分の捨てた犬を今更ながら撫でたり、ハグしてみた。だが、捨てられたことを恨んでいるのか、元飼い主に吠えたり、噛みつこうとする犬もいた。一方で、飼い主にまた会えて嬉しそうに尻尾を振る無垢な犬もいた。吠えられた方の元飼い主は、厳しく罰せられることを恐れ、まっ青な顔でブルブル震えていた。
王女様が言った。
「犬に吠えられた者たちは帰ってよい。自分に懐かない犬ならば、捨てる気持ちもわからないではない。だがこれからは、いくら吠えられようとも心を尽くし、お互いに深い愛情を築きなさい」
厳しく罰せられると思っていた吠えられた飼い主たちは、ほっと胸を撫で下ろし、敵意むき出しで吠えかかる犬を連れて中庭を後にした。
残された飼い主たちは、犬をわざとらしくハグして許しの言葉を待った。ついに、王女様が言った。
「その者たち、懐いている犬を捨てるとは言語道断である。捨てられても、なお慕う犬たちが不憫でならぬ」
厳しい言葉に、飼い主たちの顔色が一変した。
「だが、安心するがよい。犬が一番好きなものをお前たちが与えれば、許してやろう」
父王が口を開いた。
「ふむ?犬が一番好きなもの、とは?」
「もちろん、骨ですわ」
「骨を与えるだけで許すと言うのか?」
「ええ。ですが、その骨は・・・」
最初のコメントを投稿しよう!