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その2
以来、俺はなるべく「普通のやつ」として、学校では目立たないように過ごしてきた。カッコつけたい気持ちはやまやまだけど、ケンカはごめんだ。というより、殴られたり蹴られたりするの、嫌だし。
残念なことに、いちど目立ってしまうと、「いじめっ子」ってやつはなかなか離してくれない。あの赤ら顔のやつは、俺の顔を見るたび、「あっ、フナキだ。いじめよ」と言って、俺に蹴りをかましてくるようになった。
こんなやつに、高校3年間を怯えて暮らすのはごめんだ。
毎日の祈りが通じたのか、赤ら顔のやつは留年した。
俺は違う色のネクタイを締めて登校する赤ら顔のやつに「そこからも消えてくれ」と願った。その願いも通じ、赤ら顔のやつは、ほどなく退学した。
「本気で願えば、かなうんだ」と分かったが、こんな使い方は二度としたくなかった。
他の不良たちは、そこまで俺に構うことはなく、俺は普通に友達を作り、学生生活を送ることができた。
就職を希望する同級生が多い中で、数少ない進学希望を出し、奇跡的に推薦入試に受かって、誰よりも早く自由を手にした。
進路が決まってしまったら、突然「ここで勉強することには、もうあまり意味がない」と気づいた。2日に1度くらい早退をするようになったが、教師も大して注意する気もないみたいだった。
思いがけない怠惰な生活を手に入れた気がして、俺は何となくほんわかした気分で毎日を過ごしていた。
そんな中での、久々な不良からの呼び出し。
不穏な気配を拭うことは難しい。
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