仄暗い彼岸花

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ペチャ...ペチャっと濡れた音が耳に届く。 西ノ原家のベッドを、お借りして寝ていた僕の身体を、少しざらついた他人の舌が、這いずり回っている。あまりの気持ち悪さに、眠気を我慢して目を開けてみると、 輝光の瞳と目が合う。 「なにっ、やってる.........」 あまりの強烈すぎる出来事に、押し殺したような声しかでなかった。 輝光は、その問いに答える気はないようで、この上なく幸せそうに鼻歌を歌うかのように、僕の来ていたものを脱がせにかかっていた。 「止めろっ!誰と勘違いをっ!」 そうしてやっと、輝光は口を開いた 「蒼と誰かを間違えるほど耄碌(もうろく)してないよ。ホントにきみは昔からウィットがあって」僕の興味と欲望が "こんなにもそそられる"と囁いた。 嫌だ、嫌!止めろ!お願いだから。こんなことしたってなにも、いいことがない。と僕の再三の訴えはまるで聞こえていないかのように、丁寧に肛孔に施しをして、 欲望の切っ先を、そこにねじこみゆっくりと動き始めた。その最中のことは、痛みとショックでほとんど覚えていない。否、覚えていることを拒否したのだ。 つぎの日の朝、体内に彼の精液がつたって出ないように力をいれながら、バスルームを拝借した。 最低最悪の経験をしてしまった。早くここから一刻も帰ろう。輝光はやはり普通ならざる男なのだ。 弟にどんな顔をしたらいいのかわからない。 そう思ってバスルームからでようとした瞬間、運悪く本人が入れ替わりに風呂に入ってきた。 「おはよう。送っていくから少し待ってて」 と、いままでに聞いたこともないような朗らかな声で そして、脅すように、一人で帰ってもいいけど、 蘇芳に昨日のことばらされたくないでしょ?と よく考えれば蘇芳にばれて困るのは、彼のほうなのに、その時は正常な判断ができなかった。 仕方なく、寝室に戻り輝光が戻るの待っていると、 部屋のドアが乱暴に開いた。 その人物はいままで全く見たこともないけれど、 輝光をもっと獰猛したような顔立ちで、周りの人間が一瞬に虜になるようなカリスマ性があった。 僕はあわてて、あのどちら様で? と声をかけると、低い唸り声のような声で、輝光はどこだ?と一言。風呂に行っていますと、答えたら そうか。と頷いた。 そして、また、低い声で 「おまえ、榊家の長男か?」 「はい。どこかで、お会いしましたか?」 そうすると、"これ"のどこがそんなにいいんだか。 俺にはサッパリわからん。 と、吐き捨て、来た時と同じ乱暴さで、出ていってしまった。あまりの失礼さと、一瞬の出来事で、茫然自失してしまった。 そして、輝光が部屋に戻ってきて、下で朝食くらい食べてから、送ってくよといわれ、また不承不承従った。 そのテーブルには先ほどの失礼な男が、美味しそうなクロワッサンを食べ、カフェオレを優雅に口に運んでいた。そして、輝光はその男に、 「おはようございます。兄さん」と挨拶した。 輝光に、兄弟がいたのは初めて知った。確かに先ほども思ったが、よく似てる。 そうすると、失礼な男は、 「榊の家に行くんだろ?俺も連れていけ」
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