14人が本棚に入れています
本棚に追加
ペチャ...ペチャっと濡れた音が耳に届く。
西ノ原家のベッドを、お借りして寝ていた僕の身体を、少しざらついた他人の舌が、這いずり回っている。あまりの気持ち悪さに、眠気を我慢して目を開けてみると、
輝光の瞳と目が合う。
「なにっ、やってる.........」
あまりの強烈すぎる出来事に、押し殺したような声しかでなかった。
輝光は、その問いに答える気はないようで、この上なく幸せそうに鼻歌を歌うかのように、僕の来ていたものを脱がせにかかっていた。
「止めろっ!誰と勘違いをっ!」
そうしてやっと、輝光は口を開いた
「蒼と誰かを間違えるほど耄碌してないよ。ホントにきみは昔からウィットがあって」僕の興味と欲望が
"こんなにもそそられる"と囁いた。
嫌だ、嫌!止めろ!お願いだから。こんなことしたってなにも、いいことがない。と僕の再三の訴えはまるで聞こえていないかのように、丁寧に肛孔に施しをして、
欲望の切っ先を、そこにねじこみゆっくりと動き始めた。その最中のことは、痛みとショックでほとんど覚えていない。否、覚えていることを拒否したのだ。
つぎの日の朝、体内に彼の精液がつたって出ないように力をいれながら、バスルームを拝借した。
最低最悪の経験をしてしまった。早くここから一刻も帰ろう。輝光はやはり普通ならざる男なのだ。
弟にどんな顔をしたらいいのかわからない。
そう思ってバスルームからでようとした瞬間、運悪く本人が入れ替わりに風呂に入ってきた。
「おはよう。送っていくから少し待ってて」
と、いままでに聞いたこともないような朗らかな声で
そして、脅すように、一人で帰ってもいいけど、
蘇芳に昨日のことばらされたくないでしょ?と
よく考えれば蘇芳にばれて困るのは、彼のほうなのに、その時は正常な判断ができなかった。
仕方なく、寝室に戻り輝光が戻るの待っていると、
部屋のドアが乱暴に開いた。
その人物はいままで全く見たこともないけれど、
輝光をもっと獰猛したような顔立ちで、周りの人間が一瞬に虜になるようなカリスマ性があった。
僕はあわてて、あのどちら様で?
と声をかけると、低い唸り声のような声で、輝光はどこだ?と一言。風呂に行っていますと、答えたら
そうか。と頷いた。
そして、また、低い声で
「おまえ、榊家の長男か?」
「はい。どこかで、お会いしましたか?」
そうすると、"これ"のどこがそんなにいいんだか。
俺にはサッパリわからん。
と、吐き捨て、来た時と同じ乱暴さで、出ていってしまった。あまりの失礼さと、一瞬の出来事で、茫然自失してしまった。
そして、輝光が部屋に戻ってきて、下で朝食くらい食べてから、送ってくよといわれ、また不承不承従った。
そのテーブルには先ほどの失礼な男が、美味しそうなクロワッサンを食べ、カフェオレを優雅に口に運んでいた。そして、輝光はその男に、
「おはようございます。兄さん」と挨拶した。
輝光に、兄弟がいたのは初めて知った。確かに先ほども思ったが、よく似てる。
そうすると、失礼な男は、
「榊の家に行くんだろ?俺も連れていけ」
最初のコメントを投稿しよう!